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日ロ平和条約の不都合な真実 安倍首相の「心残り」(中)「ポスト安倍 何処へ行く日本」

Japan In-depth / 2020年9月9日 18時0分

拉致問題にかかわる北朝鮮の態度もそうであったが(前項参照)、ソ連邦の計画経済破綻という「負の遺産」を背負わされた、当時のロシアとしては、たとえ


「第二次大戦の結果、わが領土となったものである」


という、北方領土問題についての見解で譲歩してでも、日本から経済的支援を引き出したいとの目論見であったと、衆目が一致している。


1993年10月には細川首相とエリツィン大統領(いずれも当時)が会談し、択捉島、国後島、色丹島、それに歯舞諸島の名前を挙げて、これらの帰属問題を解決した上で平和条約を早期に締結する、との共同声明を発表した。世にいう東京宣言である。



▲写真 日露首脳会談における細川総理大臣とエリツィン・ロシア大統領 出典:外務省HP


ちなみに「北方領土」と呼ぶ場合、これら4島を指すのが普通だが、これは1964年に、それまで「南千島」と呼ばれていた国後・択捉両島に加え、4島を一括して返還要求の対象として、このように呼称するよう、政府が各方面に指示したことに由来する。


一方で、そもそも千島列島に属さず、北海道の一部だと見なされていた歯舞・色丹の二島を先行して返還してもらおうという、2島返還論もしくは段階的返還論と呼ばれる方式を提唱する人も現れた。


政界では鈴木宗男氏、言論界では佐藤優氏が有名だが、北海道を地盤とする鈴木氏にとっては、これは根拠のある話であるようだ。と言うのは、この2島は陸地面積でこそ北方領土全体の7%を占めるに過ぎないが、領海200海里が得られた場合、根室などの漁民にとっては、非常に大きな利益が期待できるからである。


ところが、ロシア側が懸念していたのは、まったく別の事柄だった。


2019年初頭から、安倍政権はロシアとの本格的な交渉に乗り出したが、両国の外交筋がそれぞれ明らかにしたところによると、ロシア側は日本に「前提文書」の作成を要求したという。文書の正式名称などは明かされていないが、要は、


「領土を割譲(ロシア側の論理では<返還>ではない)した場合でも、在日米軍が基地を設けるなど、ロシアの安全保障にとって脅威とならないこと」


を文書で確約してもらいたい、ということであった。


これはできない相談で、また、これこそ北方領土問題の本当のネックであると言える。


そもそも日米安全保障条約(以下、安保)の規定によれば、米軍は日本領土の


「必要な場所に、必要とされる兵力を、必要な期間駐留させることができる」


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