日ロ平和条約の不都合な真実 安倍首相の「心残り」(中)「ポスト安倍 何処へ行く日本」
Japan In-depth / 2020年9月9日 18時0分
ことになっている。沖縄の基地問題、それにからんでの地位協定の問題(駐留米軍の兵士が違法行為を働いても、日本側に裁判権がない等)と、実は同根の問題なのだ。
この申し入れについて、外交筋やマスコミでは、領土問題についての日本側の「本気度」を試そうという、踏み絵的な要求であったと見る向きが多い。早い話が、日本はロシアに足元を見られた。
その後、2020年に入って、ロシアのプーチン政権は憲法を改正したが、その新憲法には「領土割譲の禁止」が明記されている。日本側は、北方領土問題は、この条文の例外規定である「国境の画定」に当たるだろう、と期待していたが、ロシア外務省スポークスマンによって、その期待は打ち砕かれてしまった。
「クリル(北方領土のロシア側呼称)は国境の画定とは無関係」
と一刀両断だったのである。
これは結局、冷戦終結後もなお、日米安保体制を見直すことをせず、本当の意味で先の戦争を清算しなかった、日本の戦後政治のツケなのである。
別の言い方をすれば、ポスト安倍の座に誰が就くにせよ。
「安倍外交の継承」
にこだわる限り、日ロ平和条約は「永遠の心残り」となるであろう。
前に鳩山一郎を引き合いに出したのは、話がここにつながってくる。
彼は前任者である吉田首相の「対米従属」から脱却し、真の主権回復を目指した。その理念に基づいて、前出のようにソ連との国交回復を成し遂げ、内政においては「保守合同」を実現して初代・自民党総裁の座に就いてもいる。
保守合同の勢いに乗って「憲法改正・再軍備」も目指したが、これだけは、よく知られる通り衆参両院で3分の2の議席を占めることができず、実現できなかった。
憲法改正については次回触れるが、次なる政権が日米安保体制、少なくとも地位協定の問題に前向きに取り組まないで「外交を継承」しようとするなら、早晩手痛いしっぺ返しを食らうことになるであろう。
【訂正】2020年9月10日
本記事(初掲載日2020年9月9日)の本文中、「小笠原省党」とあったのは「小笠原諸島」の間違いでした。お詫びして訂正いたします。本文では既に訂正してあります。
誤:日本は、米軍を主体とする連合軍によって占領されていたが、1951年のサンフランシスコ講和条約によって独立を回復した(沖縄や小笠原省党は、この時点では米国の施政下に置かれたままであったが)。
正:日本は、米軍を主体とする連合軍によって占領されていたが、1951年のサンフランシスコ講和条約によって独立を回復した(沖縄や小笠原諸島は、この時点では米国の施政下に置かれたままであったが)。
トップ写真:APEC首脳会議出席等 -1日目- 出典:首相官邸
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