どうなる?菅政権の安保政策 「ポスト安倍 何処へ行く日本」
Japan In-depth / 2020年9月9日 23時0分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・新政権は安保政策で大変化を選択できない。
・中国懐柔による関係安定化は支持層の反発から不可能。
・選べる選択肢は日本側自制による緊張緩和のみ。
菅政権への交代が確実視されている。安倍首相の退陣にともない自民党の総裁選挙が実施される。そこにおいて菅義偉官房長官の勝利はほぼ間違いない。
菅新政権による政策変更は小規模と見られている。官房長官として安倍内閣の政策を進めてきた経緯がある。そのため大変化を選択できる立場ではない。
その小規模な政策変更とはどのようなものとなるか?
安全保障分野であれば緊張緩和の促進を図るか図らないか。具体的には尖閣正面での緊張緩和を選べるかどうかである。
■ 対中政策の4分類
安全保障政策とは何だろうか?
端的に述べれば力の均衡と敵対の抑制の2つである。現在の日本で示すなら中国軍事力との均衡改善と中国との緊張緩和だ。
その上で対象を自国と敵対国で分けると4分野にできる。
日本にあてはめれば次の形だ。軍事力の均衡改善は(A)「日本軍事力を強化」と(B)「中国軍事力を弱体化」となる。緊張改善は(C)「日本側自制による緊張緩和」と(D)「中国懐柔による関係安定化」となる。
このうち政策変更の可能性がある分野はとこか?
消去法から(C)の「日本側自制による緊張緩和」に限定される。本来は必要だが安倍政権ではできなかった政策であり同時に菅政権でも選べる選択肢だからだ。
▲図 安全保障の4分類 出典:著者作成
■ 軍事力の均衡追求は変わらない
菅政権でも軍事力の均衡追求は変わらない。変える必要もなく変える選択肢もないからだ。だから(A)「日本軍事力の強化」と(B)「中国軍事力の弱体化」は菅政権でも維持される。
日中軍事力の比率は急激に悪化している。中国軍事力の急成長により日本が比較劣位に陥っている。
この状況は改善しなければならない。絶対的劣勢に転落すれば全く対抗できなくなってしまうからだ。
だから(A)「日本軍事力の強化」が進められてきた。特に海空自衛隊が最優先で強化されている。
最近では(B)「中国軍事力の弱体化」も始まった。戦力を積み上げても中国には追いつかない。だから中国の力を削ごうとする努力である。
まずは同盟強化である。利益が共通する米豪越比との軍事的協力を進めている。
また南シナ海への関与も着手しつつある。現地は中国国益追求の焦点となっている。そこでの混乱と泥沼化を期待し中国の足を引っ張ろうとしている。
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