安倍政権の媚中派を名指しした米報告書(4)二階氏中国密着の軌跡
Japan In-depth / 2020年9月12日 19時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米中が悪化すると、対日融和策演出のため二階氏指名。
・二階氏は中国政府に日本側の苦情や要求を全く伝えない。
・米報告書は日本の権力中枢の媚中派の存在や役割を指摘した。
一方、二階俊博氏の親中ぶりはすでに広く知られてきた。私自身も北京の在勤中に二階氏が訪中し、中国側首脳と会談して、日中友好を高らかに宣言する様子を目撃していた。
中国政権はアメリカとの関係が悪くなると、日本への接近をみせるというパターンがある。ここ20年余り、繰り返されてきた行動定型だといえる。
アメリカとの対立は厳しく、コストも巨大となる。だからせめて日本とは親しい関係を誇示して、マイナスを減らし、日米離反をも図ろう。中国はこんな計算からいつもやや唐突に日本への友好姿勢をみせる。その際の「友好」の飾り窓に日本側ではまず二階氏が動員されるのだ。
だから私は北京での考察から「米中関係が険悪になると、二階俊博氏が北京に現われる」とも報告してきた。
2000年5月、当時の運輸相の二階氏は約5000人もの訪中団を率いて北京にやってきた。旅行や観光の業界を動員しての訪中だった。人民大会堂での式典では江沢民、胡錦濤の正副国家主席が登場して歓迎した。明らかに中国側の主導での友好行事だった。
北京にいた私は、この訪中団歓迎の儀式を目前にみて、それまでの中国側の日本への冷たい態度が急変したことに驚いた。江沢民主席がその一年余り前に訪日して、「日本は歴史から学んでいない」と日本側を叱責して回り、中国の国内では歴史にからむ反日の教育や記念行事を盛大にしていたのだ。
中国側がその時期に二階氏を通じて日本側にみせた唐突な微笑はかりそめだった。中国当局はそれまでの厳しい対日政策の実質はなにも変えていなかったからだ。
ではなぜ唐突な対日融和のジェスチュアだったかといえば、アメリカの対中姿勢が険しくなっていたからだった。
アメリカの当時のクリントン政権は中国の台湾への軍事威嚇などを理由に対中姿勢を急速に硬化させていた。日本には日米共同のミサイル防衛構想を呼びかけ、同盟強化を進めていた。中国指導部はそんな状況下では日米両国と同時に敵対を深めるのは不利だと判断して、日本へのかりそめの微笑をみせたのだった。
2015年5月にも二階氏は自民党総務会長として約3000人の訪中団を連れて北京を訪れた。習近平国家主席とも友好的に会談した。このときも中国はそれまで尖閣諸島や歴史認識で日本には厳しい言動をとっていた。だから二階訪中団への歓迎は唐突にみえた。
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