ペンスとハリス副大統領候補争い
Japan In-depth / 2020年9月23日 23時34分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・米大統領選、重要なのは副大統領候補の資質。
・民主党バイデン・ハリス組が勝てば、中国は息をつくことになろう。
・漫然と中国で取引する日本企業もよく考えるべき。
今回の米大統領選は、副大統領候補の資質が非常に重要な要素となっている。
結論から言えば、11月の米大統領選挙で共和党のトランプ・ペンス組が負け、民主党のバイデン・ハリス組が勝ってアメリカの政治外交を担うに至れば、中国共産党政権(以下中共)にとっては大きく息が付ける事態となろう。逆に、自由と法の支配を基本とする文明社会にとっては危機的事態となりかねない。
トランプはエネルギーの塊のような男で、米大統領は強烈なファイターでなければならず、何重もの戦いに耐えられるスタミナが必須だ、バイデンにはそれが決定的に欠けている、と強調するが、生物学的には1946年生まれの74才と決して若くはない。
しかし仮にトランプが健康問題で任期途中に辞任となっても、明確な理念を持ち政治経験も豊かなマイク・ペンスが大統領に昇格して残り任期を務める。何の不安もない。
リベラル派の牙城ニューヨーク出身で民主党員だった時期も長いトランプとは違って、敬虔なクリスチャンのペンスは、政治的にも生粋の保守派で、下院議員、インディアナ州知事、副大統領と経歴を重ねる中でしっかり実績を上げてきた。ラジオのトークショー・ホストをしていた時期もあり、露骨な「引っかけ質問」を振られても当意即妙の受け答えができる。失言とはおよそ無縁である。
トランプが大統領に再選された場合、左翼勢力は機会を見て再び弾劾手続きに持ち込もうとするだろう。しかし本音では、より安定感のあるペンスがトランプに代わって大統領になることを恐れている。その点、中共も同じかもしれない。
今回共和党は、圧倒的多数の支持でトランプとペンスを正副大統領候補に選んだ。対抗馬は事実上、一人も出なかった。予備選で草の根党員の支持を集めたトランプを党内主流派が渋々受け入れ、保守派も理念的な面で不信を隠さなかった4年前とは様変わりである。トランプがこの4年間で、政治家として成長し(誤解を呼ぶ発信は相変わらずだが)、対中東政策やエネルギー政策、司法人事などで実績を上げてきたことの反映だろう。
対中政策については評論家の多くが、トランプは近々無原則なディールに走ると言い続けてきたが、実際には一貫した傾向として対中締め付けを強めてきた。
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