ペンスとハリス副大統領候補争い
Japan In-depth / 2020年9月23日 23時34分
検事出身だが、特に2018年のカバノー最高裁判事人事に当たって、上院公聴会で、同判事の高校生時代に遡る根拠薄弱なセクハラ疑惑を執拗に追求し、「この調子なら検事時代にどれほど冤罪を生んだことか」と保守層の間で憤激を買った。バイデンは、国民の統一と融和を実現する大統領になるというが、ハリスを副大統領候補にした時点でそれは不可能になったと言える。
選挙用に出した回顧録でハリスは、ホモセクシュアルなど性的少数派の権利拡大に尽くしたことを最大の功績と誇っているが、外交問題に関してはほとんど記述がなく「期待できない未知数」以外の何ものでもない。
2019年から2020年にかけて米議会は、香港、ウイグル等に関して数次の対中制裁法案を通したが、ハリスは何ら目立った役割を果たしていない。
ハリスの検事としての経験は本来、「司法カード」を用いた中共締め付けに役立つはずである。かつてソ連崩壊をもたらしたレーガン政権は、対共産圏テクノロジー封鎖をカギと位置づけ、輸出規制違反の起訴件数を従来の約600倍に増やした。「司法カード」のフル活用である。
トランプ政権はこのレーガン戦略に倣い、近年、FBIと司法省の人的資源を中国案件の捜査・起訴に大きく振り向ける「中国シフト」を敷いてきた。
しかしバイデン政権下では、この「中国シフト」が解かれ、むしろ「人種偏見に侵された」アメリカの警察組織や反同性愛の立場を取る宗教右派、「利益優先で二酸化炭素を排出する」企業などに限られた司法資源を振り向け、中国絡みのスパイ案件はなおざりにされる懸念がある。
ハリスなど、その「シフト転換」の先頭に立ちかねない。中共にとっては願ってもない展開だろう。
中共は、「米国こそ黒人が差別され、警察の暴力が横行する非人権国家だ」とのプロパガンダに余念がない。そこには、米国の司法資源を「警察や右翼による黒人抑圧」の追及に費消させようとの狙いも込められている。バイデンとハリスはその術中に手もなくはまりかねない。
日本にも、戦略的に重要なハイテク分野において、漫然と中国で取引を続ける企業が少なくない。トランプ政権はそこも「司法カード」による攻撃対象としてくるだろう。「同盟国」の企業であっても容赦はないはずだ。日本政府と企業が状況を正しく認識し、自ら修正に動く主体性を欠くのであれば、アメリカの「司法カード」に潰されても、文明の将来に鑑みればやむを得ない。
何とかバイデンが勝ってくれないか、と祈るようでは、その結果、中共の圧迫のもとで暮らすことになる将来世代から、長く怨みを買うことになろう。
トップ写真:ペンス副大統領候補 出典:lex.dk – Den Store Danske
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