米大統領選とメディア その5 日本の識者の偏向報道依存
Japan In-depth / 2020年10月21日 23時0分
バイデン氏にはその疑いを生むだけの問題は多々あった。最近の公開の場での発言では「コロナウイルスでアメリカでは1億2千万人が死んだ(実際のアメリカの死者がその時点で12万人だった)」と述べていた。
バイデン氏はそのほかにもバージニア州内にいるときに「ここノースカロライナ州では」と発言した。オハイオ州とアイオワ州をまちがえたり、という失言やミスをも続けてきた。
だから「バイデン氏は認知症ではないのか」という疑問は共和党やトランプ陣営だけでなく一般でもかなり広範に表明されてきた。
主要メディアの間ではFOXテレビがこの世論調査結果を正面から報道した。
一方、CNNやワシントン・ポストは「トランプ陣営支持のFOXはなぜバイデン候補をあえて傷つけるような認知症問題を大きく取り上げるのか」という疑問を提起する記事や番組を発信していた。
「バイデン氏認知症?」などというテーマを取り上げること自体が民主党への意図的な攻撃だとする対応だった。
アメリカの主要メディアの政治性というのはここまで根が深いのである。
日本にとってのアメリカの政治のあり方の重要性はいまさら説明の要もないだろう。その政治の流れを決めるのはもちろんアメリカ国民だが、その国民の思考を大きく左右するのがアメリカの主要メディアの姿勢である。その姿勢の特徴の裏も表も正確に知ることがアメリカ政治の読み方のカギとなる。
日本側にとって危険なのは、日本の大手メディアやアメリカ通とされる識者の多くがアメリカ政治に関してニューヨーク・タイムズやCNNの報道に全面依存する傾向である。
だがこれらメディアはトランプ政権に関しては経済政策や軍事政策、対中政策での明白な実績を無視、あるいは軽視する傾向が強いのだ。堅固なトランプ支持層の声にも注意を向けず、大統領の政策からは離れた片言隻句の特異性だけを拡大して叩くという報道パターンが多いのである。
だからその種の報道だけに頼ると、アメリカの政治の現実を大きく誤認する危険があるといえよう。
(終わり。その1、その2、その3、その4。全5回)
*この記事は一般財団法人「交詢社」発行の「交詢雑誌」令和二年九月特集号に「アメリカ大統領選とメディア」という題で掲載された古森義久氏の寄稿論文の転載です。
▲写真 メディアの質問に答えたあとミネソタ州へ向かうトランプ米大統領(2020年9月30日 ホワイトハウス) 出典:The White House
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