台湾へのミサイル引き渡しはない
Japan In-depth / 2020年10月27日 13時11分
■ 米国の政権交代
第2は米国の政権交代である。新政権はトランプ政権の計画をそのままに実施する義理はない。まず間違いなく対中交渉の材料として利用する。その結果、巡航ミサイルの引き渡しはとりやめとなる。
米国は政権交代の雰囲気にある。米大統領選挙はバイデン候補が優勢となっている。トランプ大統領の再選は難しい。そう見られている。
バイデン新政権はトランプ政権の武器売却をそのまま実行するだろうか?
機械的には実行しない。少なくともそうなる。
武器売却を中国との交渉材料にするからだ。実際に武器を引き渡すかどうか。それにより中国から各種の譲歩を引き出そうとする。
中国はその交渉に乗る。巡航ミサイル引渡は中国や指導部の面目を潰す。それを避けるため交換条件として種々の便益を米国や米新政権に与える。
だから巡航ミサイルは引き渡されないのである。
それで米国も困らない。台湾への武器売却は重要な問題ではない。
もちろん台湾の現状維持は重要である。東アジア政策の根幹だからだ。
だが、そのために無理をして武器を引き渡す必要もない。安定は米国の関与の結果である。また米中関係が維持されている結果でもある。台湾の軍事力により安定しているわけではないのだ。
つまり武器売却は絶対必要な施策ではない。別に売らなくとも問題はない。
米国にとってはリスクでもある。台湾の冒険主義を助長する危険性がある。「台湾には米国がついていて独立を支援している。だから攻撃武器も売ってくれる」、そのように誤解させかねないのである。(*)
▲写真 トランプ大統領。そもそもトランプ大統領も本当に巡航ミサイルを引き渡すつもりがあったかは疑問である。それで交渉と譲歩を引き出すようにもみえるからだ。写真はトランプ大統領のホワイトハウス公式写真。 出典:WIKIMEDIA(撮影:Shealah Craighead)
■ 調整材料として使われる
第3は調整材料としての利用だ。巡航ミサイルは米中交渉における落とし所となる。そのため台湾に引き渡されない。
米中交渉は「引き渡す」「引き渡さない」の二分法とはならない。引き渡す武器の種類や数量で折り合いをつける選択肢もある。
そして、おそらくは巡航ミサイルだけを引き渡さない形で落着する。
売却対象は3種類である。自走式ロケット砲、監視偵察器材、巡航ミサイルだ。
自走式ロケット砲は中国は問題とはしない。陸上戦用の武器である。また攻撃的武器でもない。だからどうでもよい。そう考える。
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