インドネシア、ウイグル問題で二重基準
Japan In-depth / 2020年11月1日 18時0分
中国へ送還された可能性が高いウイグル族のその後の消息に関しては一切情報はなく、生命の危険すら指摘されている。
■ ポンペオ米国務長官の中国批判
10月29日にインドネシアを訪問したポンペオ米国務長官は、イスラム教団体に向けた講演の中でウイグル問題に触れ「中国共産党のウイグル族への対応は宗教の自由を侵害する最大の脅威である」との認識を示した。
その上でポンペオ氏はインドネシアのイスラム教徒に対して、同じイスラム教徒としてウイグル族に対する中国の対応の事実を見極めるように求めた。
▲写真 ポンペオ米国務長官(左)とインドネシアのルトノ・マルスディ外相(右)(2020年10月29日 ジャカルタ) 出典:インドネシア外務省ホームページ
これはインドネシア政府のウイグル族問題に対する「ダブルスタンダード」を暗に批判した「手厳しい指摘」ととらえられている。
RFAは米国系の報道機関であり、米政府関係者も当然その「ウイグル族の中国への強制送還」という報道内容は承知しているものとみられるからだ。
ただし現在のトランプ政権は対中強硬策を続けており、ウイグル族の処遇に関してインドネシア政府を表立って批判することは対中包囲網にインドネシアを取り込みたい米政府の思惑に反するとみられることから、あえてこの「強制送還問題」には触れなかったものとみられている。
■ 脱中国に踏み切れないインドネシア
今回のウイグル族の中国への強制送還について、人権団体などは「中国へ送還後直ちに処刑される可能性もある人権上極めて重大な事案だ」として、インドネシア政府に説明を求めているが、政府は沈黙したままだ。インドネシアのメディアもこれまで報道した形跡はなく、背後に大きな政治力の存在をうかがわせる。
菅義偉首相のインドネシア訪問、さらに今回のポンペオ米国務長官と相次ぐ訪問でインドネシアは中国が覇権を主張している南シナ海問題で「国際法や秩序に基づく問題解決」で基本合意した。
しかし、日米がインドやオーストラリアなどと目指す「安全で平和なインド太平洋の確保」という新たな枠組み構築に対してインドネシアは慎重姿勢を維持している。中国はこうした構想を「新たなNATOを作ろうとしている」と批判している。
インドネシアは、中国から巨額の経済支援やインフラ整備などでの協力を受けている。その中国への一定の配慮がジョコ・ウィドド政権内に存在していることがこうした慎重姿勢に影響している。
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