みっともない政権支持派(上)再論・「正義」の危うさについて その4
Japan In-depth / 2020年11月2日 23時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・菅政権の支持率急落。安倍政権の「隠蔽体質と驕り」継承を暴露。
・自著で「議事録」の重要性部分を削除。出版社が「忖度」か。
・これを許せば、時の為政者の都合で歴史改ざん、国民洗脳の危険も。
歌舞伎や落語のような伝統芸能の世界では、名前(芸名)を代々受け継いでゆく習わしがあり、それも伝統の一側面だとされている。したがって大きな名前を継ぐ、つまり先代が名人上手と言われる存在だと、襲名するのは大変なプレッシャーであるらしい。『笑点』でおなじみの三遊亭円楽師匠など、先代が偉大過ぎるからと、わざわざ「六代目円楽」と名乗っている、というように。
政治家の場合は、二世、三世は大勢いるが(小泉進次郎氏など四世)、一般に世襲に対しては批判的な見方をする人も多いし、いずれにせよ首相の座にまで上り詰めたような政治家は、前任者とは異なる「自分のカラー」を打ち出そうとするケースが多い。この点、もともと「首相になりたいというほどの野心はなかった」と公言し、内政・外交ともに「安倍路線の継承」を掲げる菅首相は、いささか珍しいケースである。
就任当初、その安定感が高く評価されたと見えて、62%という高い支持率が示された。ところが、秋の声を聞くとともに、たちまち急落。メディアによってばらつきはあるが、各種世論調査で、おおむね10%以上も下落した。
理由は割と簡単で、まずは日本学術会議をめぐる任命拒否問題。続いて、自身の著作の「改訂」問題が表面化したからである。
私見ながらこれは、菅政権が前任者=安倍政権の悪い部分を継承していることを自己暴露したものと思える。なにかと言えば、
「隠蔽体質と驕り」
である。まずは著作の問題から見てゆこう。
2012年3月、当時野党・自民党の議員であった菅氏は『政治家の覚悟 官僚を動かせ』(文藝春秋企画出版)という本を出版した。版元が文藝春秋社でなく企画出版ということは、自費出版か、それに近い形態だったのだろうか。
この年の暮れに自民党が政権を奪回し、第二次安倍内閣の登場となるのだが、同書には、東日本大震災に際して、当時の民主党政権が対応にかかわる議事録を残していなかったことを痛烈に批判する一文が載っていた。いわく、
「議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為」(各紙電子版などによる)
▲写真 『政治家の覚悟』菅義偉著(文春新書)。公文書管理の重要性を訴える部分が削除されていた。 出典:アマゾン・ジャパン
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