バイデンなら北朝鮮軍事挑発
Japan In-depth / 2020年11月15日 15時16分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・対北強硬姿勢のバイデン氏当確に北朝鮮が沈黙守る3つの理由。
・北朝鮮内は動揺、食糧価格高騰。人権・核で米朝対立激化へ。
・金正恩は遠からず軍事的挑発に出て、バイデンの出方を見守る。
世界の注目を集めていた米国の大統領選挙は、11月8日にジョー・バイデン前副大統領の当選確実と報じられた。ペンシルベニアを始めとしたいくつかの州では逆転また逆転の接戦だった。ジョージア州では得票数の差が0.2%だったために、票の再集計を今も続けている。
こうしたことから、トランプ大統領は、選挙で不正があったと主張し、いくつかの州で裁判闘争に入っている。しかしすでにヨーロッパを始めとした各国首脳が、バイデン氏に祝意を表明していることから、よほどのことがない限り、バイデン政権への流れを逆転させることは困難だと思われる。
■ バイデン当確報道に沈黙を守る北朝鮮
北朝鮮ではいま金正恩委員長が、その成り行きを集中的に分析させている。しかし今の所、バイデン氏当確になんの反応も示していない。そればかりか、選挙の結果さえ報道していない。
バイデン氏は、投票日が差し迫っていた米国現地時間10月18日、フィラデルフィアで開かれた集会で演説し、そこでも「われわれはプーチンや金正恩のような独裁者や暴君を包容する国民なのか。そうではない。トランプとは違う」と演説し、22日の最終討論でも金正恩のことを3度『悪党』と呼び、トランプ氏が二度の朝米首脳会談で北朝鮮に正当性を与えたとまで非難した。
しかし北朝鮮は、ここまで最高尊厳を罵倒されても、反応していない。昨年11月にバイデン氏が金正恩委員長を非難した時に、「バイデンこそ、執権欲に狂った老いぼれ狂人である」とこき下ろしたのとは大違いだ。ただひたすら党第8回大会を目指す「80日間闘争」を強調し内部固めに集中している。
沈黙を守っている理由としては、3つほど考えられる。
1つは、来年の1月の党8回大会で対米方針を打ち出すので、あえて今急いで対応する必要がないと考えていることだ。
2つ目は、党内の粛清続きで、対米交渉ラインの人材が欠如し、米国にしっかりと対応できる体制が整っていないことが考えられる。
3つ目はトランプ大統領が敗北宣言を行っていないことだ。米国新政権の出帆時期が見えづらいことも、沈黙の要因と思われる。
■ 北朝鮮の民心は動揺、一時物価が急騰
しかし北朝鮮の市場(チャンマダン)はすぐさま反応した。バイデン当確が北朝鮮内部に伝わるや、「食糧価格」や「食用油」「砂糖」などが一時2倍以上急騰し、食糧買いだめ現象まで発生した。バイデン政権が発足すれば、来年上半期までは政策空白が生じるだけでなく、対北制裁が強化され長期化するという認識が広がったためだ。
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