大阪都構想、挫折の理由(上)コロナに敗れたポピュリズム その4
Japan In-depth / 2020年11月28日 23時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・二重行政のムダの指摘と都構想提起は古くからある。
・知事・市長同時確保で期せずして〝府市合わせ〟解消のパラドクス。
・都構想は高コスト、住民サービス低下の反対論が説得力持つことに。
ジャーナリズムで働く者として、まことにお恥ずかしい限りなのだが、2011年の暮れに「大阪都構想」という言葉を聞いた時、内容をよく知りもしないで、
(グッドアイデアかも知れない)
などと思ってしまった。もちろん、そんなことを活字にしたりはしなかったが。
東日本大震災を経験し、首都直下地震がいつ起きても不思議ではない、などと言われる中、首都機能のバックアップを設けることは喫緊の課題だと考えていたので、いち早く大阪が手を挙げてくれたのかと早合点してしまったのである。
しかし、少し調べただけで、これは違うな、ただの焼き直しじゃないのか、と思うに至ったというわけだ。
今年11月1日、この構想の是非を問う住民投票が行われ、僅差で否決されたことは、未だ記憶に新しい。ただ、大阪府と大阪市の二重行政問題は、かなり以前から指摘され、東京23区のような特別行政区に再編してはどうか、というアイデアも、今回初めて示されたものではない。
たとえば2000年に、当時の太田房江府知事(ちなみに日本初の女性知事である)が、大阪府と大阪市を統合する構想を発表し、大阪都という言葉も、この時すでに用いている。焼き直しか、と私が思ったというのは、このことが記憶にあったからだ。調べてみると、1950年代と60年代にも、それぞれ似たような構想が示されていたことも分かった。
ただ、これらの「初期構想」は、いずれも具体化することなく消滅してしまっている。
前述の太田知事の案も2004年に、府に代わる広域自治体としての大阪新都機構を設けるとし、市については、
「政令市の枠組みは残したまま住民自治の拡充を図る」
というところまで具体化したが、単なる「提言」に終わってしまった。大阪市がきわめて非協力的であったことが原因で、提言自体がなにやら玉虫色になっているのも、同じ理由である。
その後、2008年に橋下徹氏が大阪府知事に当選したわけだが、彼自身、当初からこうした「都構想」を提唱していたわけではなかった。むしろ、当時は自民党に所属していた府議会議員たちが知事を動かし、2010年に橋下氏を代表とする「大阪維新の会」が旗揚げされた際、目玉政策として、大阪市と堺市の政令指定都市を解消して大阪府と一体化させ、もって府全域を「大阪都」とする改革を2015年までに実現を目指す、と発表された。念のため述べておくと、法制度上「都」にはなり得ないので、これは一種のキャッチコピーである。
▲写真 大阪府知事就任当初の橋下徹氏(2008年3月17日) 出典:U.S. Consulate General - Osaka (public domain)
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