大阪都構想、挫折の理由(下)コロナに敗れたポピュリズム その5
Japan In-depth / 2020年11月30日 11時4分
「吉村知事に迷惑をかけてしまった」
と自己批判したが、謝る相手が違うだろう、という批判の声が噴出した。
▲写真 都構想敗北 記者会見 出典:大阪維新の会Facebook
それ以上の打撃は、有権者に対して説明を尽くす機会が制約されてしまったことだろう。
2015年の住民投票を控えた時期には、大阪市が市内各地で計39回も説明会を開き、 多くの場合、橋下市長自身が都構想の意義を語ったものだが、今回はリモートを含めて11回。言うまでもなく「密」を避ける必要があったからだが、維新のポピュリズムを支えてきた「有権者とひざを突き合わせるようにして政策を説く」というスタイルが、今次は機能しなかったのである。
そもそも住民投票自体に、
「コロナで国中ひっくり返るような騒ぎのさなかに、今やるべきことなのか」
という批判の声が高まっていた。総じて維新に対して、新型コロナ禍への対策よりも都構想実現を優先させているのでは、といった疑惑の目が向けられるようになってきたのだ。
このことはまた、反対論者たちを一段と勢いづかせることにもなった。
大阪市を解体して4つの特別区に再編する、というのが今回提示された都構想の具体的な中身であるが、再編に伴うコストや、前述の保健所の実例があるように、リストラの弊害が心配される。こうした声に対して、松井大阪市長は、
「たしかにコストはかかるが、中長期的に見れば健全な府の財政を取り戻す初期投資として容認できる範囲。行政サービスを低下させないための財源には、市の税収や市営地下鉄の営業利益を充てんできる」
と反論したが、ここにも新型コロナ禍が暗い影を落とした。経済活動が停滞し、税収も地下鉄の売り上げも急落してしまっている。そのシミュレーションは甘いのでは、と指摘する声が高まったのだ。
このような反対論が、維新のもうひとつの目玉政策である、
「万国博覧会とIR(カジノを含む総合リゾート)誘致」
に影響を及ぼさないはずもなかった。その急先鋒が、れいわ新撰組の山本太郎代表で、幾度となく都構想に反対するよう訴える街宣活動を行い、維新の本当の目的は、府に比べて潤沢な市の税収を、彼らの政策実現のための財源とすることだとして、
「早い話が、カツアゲ(恐喝)だ」
とまで言い放った。表現はいかにも乱暴だが、主張そのものには経済学者らも賛意を表明し、とどのつまり、維新が新選組を蹴散らした政変の再現は成らなかったのである。
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