イージス・アショア問題の根源
Japan In-depth / 2020年12月3日 11時0分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・頓挫したアショア、拙速導入方針はSPY7採用ありきだったか。
・アショアは法律面・防御面で不備。SPY7は規定の試験も経ず。
・調達経緯不透明なSPY7は違約金がかかっても解約すべきだ。
河野太郎前防衛大臣はミサイル防衛用のイージス・アショア配備の中止を決定した。これによってその代案が検討されているが、政治問題にもなって混迷を深めているばかりだ。だがメディア、特に記者クラブメディアはその問題の根源を無視し、自民党国防部会などのリリースを吟味せずに、まるで広報のようにそのまま報道している。
そもそもアショアの導入、レーダーとしてのSPY7の「お手つき採用」まで、防衛装備としては、経緯はかなり異様としか言いようがない。
▲写真 SPY-7 出典:ロッキード・マーチン社
筆者が取材した限りではアショアの導入はグローバルホークやオスプレイ同様に首相官邸の補佐官らと防衛省の内部部局の防衛政策局の一部官僚が結託し、海上自衛隊のイージスシステムの専門家の協力も得ずに、法整備も行わず、性急に話を進めた。まるでナチスドイツの総統府が国防軍の頭越しに新兵器の調達を決めたのと酷似している。その目的は国防というよりもSPY7というレーダーの調達ありき、としか思えない。
そもそも現行法ではアショアは電波法の規制によって、設置しても稼働できない。海自のイージス艦は電波法の規制によって沖合50海里にまで陸地から離れないとイージスレーダーを作動できない。同様なアショアのレーダーを陸地で作動させるのは違法行為になる。このためアショアを建設させても稼働できない。稼働させるのであれば脱法行為になる。当然訓練などできないし、違法行為を前提にするのであれば、文民統制の否定となる。
設置するには法改正が必要であり、その前提としては陸上に設置して人体や電子機器などに障害が発生しないかを調べるアセスメントが必要である。アショア導入を決定するならば法改正まで行かなくとも、きちんとしたアセスメントを行って法的に設置できる根拠を作るべきだった。
ところが防衛省は設置予定の自治体に対してはそのような説明をせずに、レーダー波の説明は陸自の03式中距離地対空誘導弾を用いて説明していた。これは例えるならば高速道路の騒音問題で大型ダンプカーの騒音を課題としているのに、中型トラックのデータを持って住民に説得するようものであり、詐術といってよい。
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