EV化でCO2排出は7割減る
Japan In-depth / 2020年12月23日 23時0分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・ 火力発電電力でもEV化でCO2は7割減らせる。
・ 火力発電所は車よりも高熱効率で低CO2のLNGを使っている。
・ 30年には電力構成のうち1/4以上は再エネとなる。
CO2対策により電気自動車(EV)が普及する見込みである。政府はCO2削減のため2030年代でのガソリン車製造中止を決めた。以降、自動車はEV等に代わる見込みである。
しかし、その効果を疑問視する意見もある。日本は火力発電を主流としている。車をEVに変えても火力電気を使う限りはCO2排出は減らせない。そのような主張だ。最近では17日にトヨタ社長が強調した旨が報道されている。*1
これは本当だろうか?
正しくはない。なぜなら熱効率、燃料、電源構成の影響を反映していない。これらを加味すればEV化でCO2排出は7割減少する。
▲写真 アリア。ガソリン車をEVに置換するとCO2発生量は7割減らせる。写真は日産のEVアリア。90kWhの電池を搭載し公称600km以上の航続距離を持つ。 出典:日産ニュースルーム
■ 熱効率は20%高い
第1にEVには熱効率の有利がある。1単位の燃料から何kWhの電力が取れるか、何馬力・時間の動力が取り出せるである。
結論からいえば、仮にガソリンを使った火力発電でもEV車にすればCO2は60%減少する。
▲写真 サハリン。コロナ禍における化石燃料需要低迷でも天然ガスの新規開発は進められている。日本周辺ではサハリン2拡張、極東LNG、ウラジオストックLNG、ヤクーチャLNGである。写真はサハリン2のLNG化プラント。 出典:ガスプロム
火力発電所と自動車では熱効率はどちらが高いか?
火力発電所だ。熱効率は今でも40%を超えている。*2 30年代には発電所平均で50%は超える。低効率の発電所が淘汰されるからだ。
30年代には熱量2kWh分の燃料から1kwの電力が取れる。そして発電所は常時この高効率をを維持する。
対してガソリン自動車は30年代でも平均30%も及ばない。熱量3.3kWh分のガソリンからようやく1kWh分、1.33馬力時間しか取れない。
確かに最新エンジンは熱効率が40%に達する。*3
ただ、これは最高条件の数字だ。実運転では達成できない。エンジン回転数や外気温、標高ほかの条件が悪化すれば覿面に低下してしまう。
1リットルのガソリンで両者を比べると次のとおりだ。火力発電では4.5kWhつまり6馬力・1時間相当の電力が得られる。ガソリン焚きの商用発電所は存在しないがそうなる。ガソリン車は2.7kWhつまり3.6馬力・1時間の運転ができることとなる。
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