トランプ信者もYouTubeも冷静に ネット規制の危機 最終回
Japan In-depth / 2020年12月24日 23時42分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・YouTube「大統領選不正を流布する動画」削除方針には。
・判断基準があいまい。ネットメディアとして自殺行為。
・ネットにBPOのような第三者機関を立ち上げてはどうか。
後世の歴史家が2020年について語る時、新型コロナ禍を忘れることはないだろう。
それは大前提だが、11月以降は米国大統領選挙をめぐる騒動も、長く世界の人々に記憶されるのではないだろうか。
現時点の話題に立ち返って、あくまでも選挙結果を認めないトランプ大統領は、ついに
「戒厳令を布告した上での再選挙」
を検討していると報じられた。ただでさえコロナ禍に歯止めがかからないというのに、戒厳令下で新年を迎えるなどアンハッピーどころではない……まあ、この原稿を書いているクリスマス前の段階では、どこまで本気か分からないが。
度し難いのは、日本のネット民の一部に、この動きを肯定する内容を発信する者が散見されることだ。彼らはトランプ大統領を支持する理由として「自由と民主主義の守り手だから」と言っていたのではなかったか。戒厳令とはどういうことか、理解できているのか。
中国系の反共サイトでも、さかんにトランプ支持の「市民の声」が取り上げられているが、中国共産党がチベットや香港でなしたことは絶対に許されないというのであれば、戒厳令を正当化する言辞など、冗談にも口にしてはならないのではあるまいか。
敵の敵は味方だという『三国志』もどきの発想なのかも知れないが、論理的にも倫理的にもお粗末だとしか言いようがない。
こんなことになるのではないかと危惧されたから、私は前シリーズの中で、日本人トランピストや彼らに容易に煽られる量産型ネット民に対して、味噌汁で顔を洗ってから現実を見つめなおすようにと、やんわり忠告申し上げておいたのであるが、効果てきめんとは行かなかった。残念だが、洗脳を解く作業には時間がかかると割り切るしかない。
さて、今回のテーマは、この騒動のもうひとつの側面である。
前回の最後に触れたが、12月14日の選挙人投票をもってバイデン氏の当選が確定したことを受け、YouTubeが、
「以降、今次の大統領選挙は不正であるとの言説を流布する動画は、削除対象とする」
と発表した。選挙の「完全性を担保するため」という理由だとか。
これについて、結論から言えば私は賛成しかねる。
自分の信じたいものしか信じない、という態度をあらためない人たちがデマを流布したり、デマに煽られてしまうのはよくないことだが、個人を誹謗中傷するなど、誰かに迷惑を及ぼさない限りにおいては、
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