日本の対中政策の無惨な失敗
Japan In-depth / 2020年12月26日 19時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・外交文書が公開。日本の「対中従属」「人道主義欠落」が露呈。
・対中ODAは戦後最大の日本外交の失態。中国の軍拡に寄与。
・国民の税金でみずからに襲いかかる凶暴なモンスターを育成。
日本の外務省の中国政策に関する外交文書の公開は衝撃的だった。この12月23日に解禁された30余年前の公文書である。
日本の外務省は1989年の天安門事件での中国政府による自国民の大量殺戮に対して中国政府を非難せず、世界の他の民主主義諸国とは離れて、理解を示していたのだ。しかも中国政府への巨額の政府開発援助(ODA)を継続する方針だった。
そんな日本の政策の目的は中国の民主化や改革・開放を進めさせるという点にあった。
だが日本の援助は中国にまさにその反対の路線を歩ませ、民主主義の抑圧や軍拡を強化させ、日本への軍事脅威をも増すという結果を招いたのだ。
日本の対中ODA供与こそ戦後最大の日本外交の失態だった。その実態が今回の外交文書の解禁でも裏づけられたのである。
今回の外交文書は天安門事件について日本政府、つまり日本の外務省が当時、以下のような政策をとっていたことを明示していた。
「鄧小平氏の人権よりも国権という宣言を支持する」
「中国当局の自国民多数の弾圧と殺害も中国内部の問題とみて非難しない」
「他の民主主義諸国の中国非難には同調せず、中国の国際孤立の防止に努める」
「中国への従来の巨額の経済援助(ODA)を継続する」
「中国を支援すれば、中国の民主主義の拡大を助長することになる」
日本の外務省は以上のような対中融和、人権弾圧許容の異様な政策を取っただけでなく、中国政府が天安門事件での自国民殺戮に関してその行動を弁護し、釈明する声明の草案さえも中国政府のために書いていた、というのだった。あきれ果てるほどの中国への従属、
人道主義の欠落だった。
日本は従来の中国共産党政権への巨額の経済支援を続け、厳しい国際世論のなかで中国政府を擁護し、しかも皮肉なことにその後の中国の軍事力大増強や国内での民主主義弾圧の強化を助ける結果となった。そのうえに中国の軍事がらみの日本への脅威を増大することにせっせ、せっせと日本国民の血税を投入して寄与したのだった。つまりは自分を襲ってくる危険なモンスターを育てることに努めたのである。
天安門事件での中国政府による自国民の大虐殺に対して、わが日本政府は当初から非難をためらった。
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