日本の対中政策の無惨な失敗
Japan In-depth / 2020年12月26日 19時0分
1989年7月、つまり事件からわずか1ヵ月後に開かれた先進7ヵ国首脳によるアルシュ・サミットでは欧米諸国がこぞって中国政府を激しく糾弾し、制裁として中国への経済援助や政府高官交流などを停止することを提唱した。だが日本政府は「中国を孤立させてはならない」という中国政府擁護に傾いていた。
▲写真 アルシュ・サミット(1989年7月) 出典:外務省ホームページ
そこには明らかに民主主義擁護、人権尊重優先という普遍的な価値を重んじる発想はなかった。中国の国民への同情という人道主義からの配慮もうかがわれなかった。
だがそれでもアルシュ・サミットでは欧米諸国に押し切られた形で日本政府も中国へのODAの主要部分だった有償援助を停止とした。無償援助はそのままだった。
そもそも日本は天安門事件の10年前から中国に対し巨額のODAを供与していた。毎年数千億円、5年一括で1兆円を越える異例の金額だった。この点も共産主義国には政府援助を与えないというアメリカや、人道援助があくまで主体のヨーロッパ諸国とは根本の姿勢が異なっていたのだ。
日本政府はしかも天安門事件の翌年には停止していたODAの復活へと動く。一般レベルでの中国への渡航の自粛という政府の通達もすぐにキャンセルとなった。当時の中国政府首脳は日本のこの動きを突破口として国際的な制裁措置の骨抜きや解除へと動くという作戦をとったことを後に明らかにしていた。
日本政府はさらにその後、まもなく経済援助の全面復活へと進み、天皇陛下の中国訪問をも実現させる。天安門事件からわずか3年後の1992年だった。皮肉なことにその同じ1992年に中国政府は日本の尖閣諸島を中国領だと一方的に宣言した「領海法」を勝手に成立させていたのだ。
▲写真 沖縄県の尖閣諸島周辺では中国公船の航行が常態化 出典:海上保安庁ホームページ
日本は中国に対して1979年から2018年までの約40年間、総額3兆6千億円にのぼる巨額のODAを提供していた。この対中ODA供与は日本の対中外交でも、いや戦後の日本の外交全体でも、最大規模の政策事業だったといえよう。だが同時に最大の失敗でもあった。なぜならその目的をまったく果たさず、かえって中国を悪い方向へと発展させ、強化させたからだ。
まずODAは中国の対日友好にはなんの役にも立たなかった。中国政府が自国の国民に日本からの経済援助受け入れの事実を一切、知らせなかったのだ。
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