コロナと内部被ばく、対策に共通点
Japan In-depth / 2020年12月27日 23時0分
ひらた中央病院が実施した抗体陽性者へのPCR検査は、6人全員が陰性だった。検査時点で誰もコロナに感染していないことを意味する。陽性だった人たちは安心した。これだけのことを福島の阿武隈高地の病院経営者が自力でやるのだから、大したものだ。
発熱や咳が出たり、周囲に発熱した人がいれば、このご時世、誰もがコロナ感染を疑う。そして、不安になる。コロナ感染は、感染しているか、していないかいずれかの状態しかない。自分を知るには、PCR検査を受けるしかない。このあたり内部被曝対策と同じだ。
ひらた中央病院は内部被曝検査のときと同じく、専門家である坪倉医師の力を借りて、独自に立ち上げた。彼らが力をつけたのは、東日本大震災を経験したからだ。
内部被曝対策では、政府の依頼を受けたリスク・コミュニケーションの専門家などが「被曝は心配するレベルではない」「放射線に関する正しい知識が必要だ」などと主張し続けたが、浜通りの人々は彼らの主張を信用しなかった。南相馬市在住の友人は「政府は責任逃れのために我々を説得しようとしているだけ」と語ったことがある。彼らが安心したのは、自らが内部被曝検査を受けて、陰性の結果を得た時だ。
放射線医学の専門家の中には、「福島第1原発事故で地域の汚染はチェルノブイリとは比べ物にならないくらい少ない。検査をする必要性はない」という人物もいた。確かに公衆衛生の視点に立てば、その通りなのだろう。現在も内部被曝検査を続けていることは「医療経済的に有用性は低い」(前出の放射線医学の専門家)のかもしれない。
ただ、住民の視点に立てば事態は違う。
検査をして陰性を確認することで安心し、将来の風評被害に備えるため、今でも検査体制を整備している。
私は、コロナ対策に欠けているのは、この視点だと思う。厚労省や専門家は「PCR検査をやりすぎると陽性者を全て入院させないといけないため、医療が崩壊する」や「保健所の負担が大きくなりすぎる」などの理由で検査を抑制してきた。前者はコロナを感染症法の二類相当としたためであり、柔軟に運用を変えればいい。後者は保健所以外の民間検査を拡充すればいい。その気になればできることだ。
日本のコロナ対策で決定的に欠けているのは、感染を心配する国民の視点に立った対応だ。コロナは感染しても無症状の人が多く、彼らが周囲にうつす。皆が疑心暗鬼になる。
世界では国民の目線に立った施策が試行錯誤されている。例えば、英スコットランドのセントアンドルーズ大学では、クリスマス休暇を前に、全学生を対象に簡易抗原検査のスクリーニングを開始した。休暇中に帰省を予定している学生には、3日あけて2回検査を受けるように求めた。検査で陽性となれば帰省は控えるし、陰性なら安心して親元に帰ることができる。
▲画像 PCR検査イメージ 出典:Pixabay
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