危機深まる金正恩体制【2021年を占う!】北朝鮮
Japan In-depth / 2020年12月30日 11時59分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・経済制裁・新型コロナ・自然災害の3重苦で経済状況は最悪。
・人事異動と粛清で統制図るも、金正恩指示は無視される傾向に。
・対米・対韓政策は定まらず。新型コロナと食糧問題の解決次第。
北朝鮮は2019年12月28日から31日まで、朝鮮労働党第7期第5回中央委員会総会をもった。労働新聞は、この時の金正恩委員長による延べ7時間の演説を「2020年新年の辞」に代えて1月1日付1面で報道した。
そこで金委員長は、北朝鮮情勢を「前代未聞の難局」と分析し、経済政策の失敗を認めた上で、この難局に「核保有路線の強化」に基づく「新たな戦略兵器」の開発と経済建設での「自力更生」よる「正面突破戦」で戦い抜くと宣言した。
こうしたことから、2020年の米朝関係は、トランプ大統領が譲歩するか、金正恩が「完全な非核化」に応じるかの二者択一の緊張した方向に進むのではないかと見られた。しかし、新型コロナウイルスの襲来で事態は大きく変化した。北朝鮮のすべての政策が「コロナ防疫」中心となったからだ。
■ 新型コロナで危機深まる金正恩体制
2019年末に中国から始まった新型コロナウイルスの世界への蔓延は、北朝鮮の対米「正面突破戦」を「新型コロナウイルス突破戦」に転換させた。
北朝鮮当局は、2020年1月28日から中国との貿易をストップし、29日に入国ビザの発給を全面的に中断した。労働新聞は1月29日「武漢肺炎」の感染拡大防止を強調し、これを「国家存亡に関わる重大な政治的問題」と規定した。対外宣伝メディア「ネナラ」は北朝鮮が「国家非常防疫体制に転換する」と報じた。
しかしこの体制に移る前の1月下旬には、すでに平壌には旧正月の休暇を利用した数千人の中国人観光客が入っていた。また海外に出稼ぎに出ていた北朝鮮労働者や一部外交官も北朝鮮に戻っていた。北朝鮮の防疫体制は、一歩遅れていたのである。
その後北朝鮮は、「非常防疫法」を制定し、感染症が広がる速度と危険性によって防疫レベルを1級、特級、超特級の3段階に分類した。現在は、地上、空中、海上を問わず国境を封鎖し、物資が入ってくる橋や港湾には消毒施設を設置する「超特級非常体制」を敷いている。住民の国内移動は禁止され、中朝国境2Km以内に近づけば無条件射殺するという監獄状態となっている。これは1990年代中盤から始まった「苦難の行軍」にも見られなかった深刻な状況と言える。
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