「バイデンの米国」とどう向き合う?(下)【2021年を占う!】日米関係
Japan In-depth / 2021年1月2日 23時0分
第二の理由は、トランプ大統領時代の姿勢と共通するのだが、冷戦が終結して30年以上も経っているのに、今さら「西側諸国の結束」など大した意味を持たない。この理念は、今や米国の有権者の多くに共有されていると言って過言ではない。今次の選挙においても、トランプ大統領は史上最多の得票を得た。バイデン候補がそれを上回ったわけだが、こうした有権者の声を無視しての政権運営などあり得ないだろう。
その前提で考えるなら、日本の側から日米安保体制の見直しを働きかけるのも、ひとつの選択肢ではあるまいか。
安倍政権の総括をした時も述べたが、戦後レジームからの脱却をとなえながら、その実は米国の極東戦略に追随する立場から一歩も出ることはなかった。この結果なにが起きたかと言えば、一方では自衛隊が地球の裏側で米軍と協同することが可能になった(一連の安保法制)と言うのに、沖縄に駐留する米軍兵士が違法行為を働いても日本には裁判権がない状態は変わっていない。ロシアにも、
「米軍基地を作らない、と約束できるならクリル割譲(日本で言う北方領土返還)の交渉に応じてもよい」
などと言われて、交渉自体があえなく頓挫してしまった。
この話題や、アベノミクスの総括も含めて、『日本人の選択・特別編 安倍政権』(アドレナライズ)が間もなく配信開始となるので、できればご参照いただきたい。この1編だけなら99円、戦後政治史の流れが分かる合本版でも700円である。
新年早々、誌面で宣伝させていただいて恐縮だが、実はこれこそバイデン政権とどう向き合ってゆくべきかという、今回のテーマの基礎をなす事柄なのだ。
当面は新型コロナ禍という「今そこにある危機」に向かい合わざるを得ないとしても、それが政治のすべてであってよいはずがない。
2020年代以降のアジア太平洋地域の平和と発展をいかにして実現してゆくべきか、というのは、日本のみならず世界中の関心事となる。
その中で、日米安保体制というものが、もはや賞味期限切れなのではないか、といった議論から目をそらすことは、もうやめるべきではないだろうか。
安倍前首相のように、とにかく「憲法を変えた大宰相」になりたい一心で、改憲論議を自ら迷走させた挙句に自滅した轍を踏むことなく、
「日本国憲法の反戦平和主義と、日米安保体制の見直しを視野に入れた自主防衛論議は矛盾するものではない」
ということを、国民の多くが納得できるまで、根気よく議論する必要がある。
▲写真 普天間飛行場 沖縄県 出典:Sonata
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