多国間主義復活を期待【2021年を占う!】国際関係
Japan In-depth / 2021年1月3日 21時0分
中国は、WHOによるコロナ禍の発生源調査にはあまり協力的でなく、WHOへの財政貢献の増加や途上国への支援を通じてWHO内で政治的影響力を増している。米国としては、西側諸国と協調してWHO改革を推進していくのが最善策であるが、具体的な方針を決めるのには少し時間がかかるだろう。
気候変動への対処については、国際的な足並みが揃いつつある。パリ協定は、条約であるが各国の温暖化ガスの削減や気候変動への努力を促したもので強制力はない。しかし、米国のパリ協定の復帰は国際社会が気候変動対策で足並みを揃えることになり、脱炭素化を含む温室効果ガスゼロへの動きを加速することになる。
EUや日本は2050年までに、中国は2060年までに脱炭素化を実現するとの意向を表明しており、次期バイデン大統領も2050年まで脱炭素化を目指すことを明言している。
ロシアやインドなども漸次的に脱炭素化に取り組む姿勢を見せている。国連は、気候変動問題は人類にとって死活的問題であることを指摘してきたが、これまでにない多くの異常気象が頻繁に起こり、経済や社会、そして人命に大きな影響を与えることが現実の問題として強く認識されるようになったことが、気候変動への対処の動きを加速化して、国際協調を促すことに繋がっている。
ただ、脱炭素化には技術開発面での競争や困難、経済性、資金不足、雇用への影響などもあり、多国間主義をどのように促進するかは、単に国家間レベルの問題だけではなく、より広い市民社会の参画と努力が必要となる。
コロナ禍で大きく後退したのが、2030年までに達成しようとしている持続可能な開発目標(SDGs)である。第一の目標である「貧困の撲滅」では、既に世銀などが2020年末までには8800万人から1億1500万人が新たに極度の貧困(1日あたり1ドル90セント以下の生活)に陥ると予測しており、南アジアやサブ・サハラのアフリカでの影響が特に大きい。
▲写真 持続可能な開発目標(SDGs)目標1 貧困をなくそう(イメージ) 出典:UNDP
これらの人達の多くが製造業やインフォーマルセクター、サービス業の労働者で、ロックダウンや移動制限の影響を受けている。食料の安全保障も急激に悪化しており、国連食糧農業機関(FAO)は、1億人前後が新たに栄養不足に苦しむことになると予測している。さらに、教育への影響も深刻で、ユネスコなどは、特に女の子の場合、約1億1000万人が学校に戻ってこないだろうとしている。
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