多国間主義復活を期待【2021年を占う!】国際関係
Japan In-depth / 2021年1月3日 21時0分
パンデミックの影響は、特に紛争地域や脆弱国で深刻で、コンゴ民主共和国やナイジェリア北東部、アフリカ北西部のサヘル地方、南スーダン、イェメンだけでも、1000万人を超える子供が飢餓直前の状況だと、ユニセフが警告している。
経済から医療・保健へのアクセスまで、国家間そして国内での格差が拡大しており、パンデミックが収まらない限り、この格差はさらに拡大し、SDGsをさらに後退させることになる。ワクチンの開発と接種の始まりでパンデミック終息への明かりが見えてきたが、グローバルなワクチンの展開には相当な時間がかかるとみられるため、当面、貧困層への公的支援と債務の削減やワクチンの安価ないし無料の配布などの途上国支援が必要となる。
多国間主義は、軍縮面でも大きく後退してきている。米国は、2019年にロシアとの中距離核戦力全廃条約(INF条約)から撤退し、2021年に期限を迎える新戦略核兵器削減条約(新START条約)についても、その延長に関して米ロの対立は続いている。
米国は宇宙部隊を創設し、宇宙空間での軍拡競争に乗り出しており、中国の軍事力増強と並んで、軍縮への動きに逆行している。2017年に国連総会で採択された核兵器禁止条約は、2020年末までに発効に必要な批准を得て、2021年1月22日に発効するが、核兵器保有国や核抑止力に自国の安全保障を委ねる国々は条約を受け入れていない。
また、唯一の軍縮交渉機関である軍縮会議(CD)も実質的な交渉が行えない状態が続いている。国連は2018年に「軍縮アジェンダ」を発表し、大量破壊兵器や通常兵器、新たな軍事技術への対応での国際協調行動を促しているが、まず米ロの軍縮交渉での具体的進展がみられるかどうかが当面の焦点で、ミサイル防衛技術の進展を含む軍拡競争は暫く続きことが予想されるため、当面政治的緊張緩和の促進や通常兵器やAIを含む新たな軍事技術の開発の抑制に努力を傾注せざるを得ないであろう。
人権分野での国際協調も、ここ暫く後退の動きを見せてきていた。2018年の米国の人権理事会からの離脱は、人権問題で指導的役割を果たしてきた米国の後退を意味しただけではなく、人権侵害に対する国際社会全体の対応の消極性を意味した。
シリアやミヤンマーにおける人権侵害調査は、ロシアや中国の抵抗によって大きくは進展せず、当事国の協力も得られていない。中国による新疆ウイグル族の人権侵害や香港での民主化弾圧に対しても西側諸国は有効な対策を取れていない。
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