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東京コロナ診療目詰まりの原因

Japan In-depth / 2021年1月31日 19時0分

大病院と同じく、中小病院の不足も地域差が著しい。23区内で人口1,000人あたりの病床数が多いのは千代田区(19.7床)、港区(5.6床)、墨田区、北区(何れも5.4床)だ。一方、少ないのは、中央区(0.0床)、文京区(0.9床)、練馬区(1.3床)となる。中央区に存在する中小病院は聖カタリナ病院だけで、運営するのは療養病床41床だけだ。この結果、中央区には中小病院が運営する一般病床はない。





実は、事態はもっと深刻だ。前述の数字は中小病院の病床数を過大評価しているからだ。東京が特殊なのは中小病院の全てが一般患者を受け入れている訳ではないことだ。例えば、千代田区についで中小病院の病床数が多い港区の場合、区内に9つの中小病院があるが、このうち3つは大学病院(東京大学医科学研究所附属病院、国際医療福祉大学三田病院、北里大学北里研究所病院)、2つは専門病院(母子愛育会総合母子保健センター愛育病院、心臓血管研究所付属病院)で、一般病院は山王病院、前田病院、高輪病院、古川橋病院の4つだけだ。





富裕層が利用するイメージが強い山王病院や前田病院の病床を含めても、港区でコロナの回復期を受け入れる中小病院の病床数は人口1000人あたりの1.7床しかない。





つまり、東京には大学病院などの大病院や専門病院は多数あっても、一般人が普通の病気になった場合、紹介状なしで受診・入院できるような病院が不足しているのだ。コロナ感染から回復した患者を引き受けるのは、このような病院であり、これこそが、東京におけるコロナ診療の目詰まりの原因だ。





なぜ、こんなことになったのだろうか。それは、東京の歴史や厚労省の政策が関係する。詳細を知りたい方は拙著『病院は東京から破綻する 医師が「ゼロ」になる日』(朝日新聞出版)をお読み頂きたい。





▲画像 『病院は東京から破綻する 医師が「ゼロ」になる日』上昌広 著(朝日新聞出版)



中小病院不足の原因を考える上で、特に重要なのは、厚生労働省による診療報酬の統制だ。診療報酬は中央社会保険医療協議会(中医協)で決められる。この医療の公定価格は全国一律だ。つまり、都心の一等地の病院でも、地方都市でも同じだ。医療では地方ほど儲かり、都心部は経営難になる。診療報酬が抑制されれば、都心部の病院から経営が行き詰まる。





東京の医療崩壊は、いまに始まった話ではない。東京の一般病床は2007年の8万3,271床から2019年は8万923床へと2.8%も減っている。診療報酬が据え置かれたことに加え、厚労省が一般病床から療養病床へ転換したためだが、この間、人口は増加しているため、人口10万人あたりの一般病床数は653床から581床に11.0%も減ってしまった。





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