東京コロナ診療目詰まりの原因
Japan In-depth / 2021年1月31日 19時0分
事態が深刻なのは中小病院だ。それは、誰も守ってくれないからだ。開業医のバックには日本医師会が存在するし、大病院の多くは国公立病院だ。赤字でも税金で補填される。大企業や総合大学などが経営する病院も同様だ。2018年1月には名門三井記念病院が債務超過に陥ったことが報じられたが、三井グループが支えた。
中小病院は、そうはいかない。生き延びるためには、収益を上げねばならず、そのためには、専門分野に特化するか、不採算部門を切り捨てるしかない。医療法人社団大坪会は、2007年4月に文京区大塚の日通病院を買収し、小石川東京病院と名称を変更したが、2017年4月に診療を停止している。このケースなど、その典型例だ。
現在、文京区には東大病院など4つの大学病院本院や都立駒込病院があるが、急性期の一般病床を運営する中小病院は大坪会が経営する東都文教病院だけだ。冒頭にご紹介した東大病院の医師が、コロナ患者の転院先を確保するのに困るのも当然だ。
▲写真 東大病院(東京・文京区) 出典:Wikimedia Commons(public domain)
コロナ診療の目詰まりは、東京の医療の脆弱性を象徴している。東京の高齢化は待ったなしだ。特に中心部で、その傾向が顕著だ。港区の場合、2015年に2万387人だった75才以上の人口は、2030年には3万549人へと50%も増加する。東京の医療提供体制は、このような社会の構造変化に対応しなければならない。
高齢化と共に必要とされる医療は変わる。大学病院や専門病院が得意とする高度医療ではなく、慢性疾患のケアや介護の占めるウェイトが高くなる。胃腸炎による脱水などで入院が必要になることも増えるだろう。そんなときは近くの病院に入院したい。ところが、東京には大学病院・専門病院とクリニックは多数あるものの、このような患者を引き受ける中小病院が不足している。
一方、団塊世代が高齢化すれば、外科手術などの侵襲的な治療の需要は低下する。大学病院を中心とした高度医療提供体制は過剰となる。このような医療に従事する医師や病床を、如何にして高齢者が必要とする医療に転換するか、コロナ対応は、今後の東京の医療のあり方を問う試金石である。
トップ写真:コロナ患者の病床(イメージ) 出典:Gabriel Kuchta/Getty Images
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