「蔑視」は森氏だけの問題か(上)スポーツとモラル その1
Japan In-depth / 2021年2月22日 15時38分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・東京オリンピック・パラリンピックの開催が各方面から望まれている。
・開催可否の重要な局面で、森氏が性差別発言し組織委員長を辞任。
・後任として川渕氏が候補にあがるも、世論は反対。
・橋本聖子五輪担当大臣が新たな委員長に就任。大臣の後任には丸川珠代・元担当相が復帰。
冒頭から個人的な思いを述べさせていただくが、今年夏の東京オリンピック・パラリンピック(以下、五輪)について。
なんとかして、つまり医師会が主張するように屋内会場は無観客でもよいから、開催して欲しいと思う。
もちろん今や、世論が「開催は無理」という意見に傾いていることも、それが根拠のある主張であることも承知している。それでもなお、最後まで諦めたくはないのだ。
理由のひとつは、五輪出場を目指して頑張ってきたアスリートたちの気持ちを考えると、中止は気の毒に過ぎるということ。ただしこの観点からは、3月に最終的な判断を下す予定というのは、もう間もなくであるとは言え、遅きに失したとの謗りは免れ得ないだろう。一部のアスリートが求めたように、昨年末には決断を下すべきであった。
もうひとつは、逆説的だが、未だ新型コロナ禍で皆の気分が沈んでいるからこそ、である。今年正月の、箱根駅伝を思い起こしていただきたい。沿道での応援に規制がかかったりはしたが、駅伝などやっている場合か、とは誰も言わなかった。そして、創価大学の予想外の健闘、それを最終10区で逆転しての駒澤大学の劇的な優勝という、この上ない感動を国民に届けたではないか。
コロナに立ち向かう手段は、なにもワクチンだけではない。スポーツには、このように人々に元気を与える力がある。私の知る限り「元気があればなんでもできる」と断言できる人はアントニオ猪木くらいなものだが、やはり元気をなくすよりはよいと思う。
ところが、開催の可否を決断する直前の2月になって、森喜朗・組織委員長が辞任の沙汰となってしまった。まあ、このこと自体は自業自得だと思うが、あまりと言えばあまりなタイミングだった。大会本番まで5カ月、開催するか否かの最終判断まで2カ月を切ったところで、組織委員長の人選からやり直さねばならないとは……
事の発端は、森氏がメディアに対し、
「女性がたくさんいる理事会は、討論に時間がかかる。うち(組織委)には女性の役員が7人ほどいるが、みんなわきまえている」
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