失われた30年と「ルバイヤート」続:身捨つるほどの祖国はありや3
Japan In-depth / 2021年3月7日 18時0分
女性と男性の記者方々だった。女性の方が中心で質問された。
私は、率直に、実のところ私自身が若いころから企業側の弁護士として経営トップの方々にアドバイスするチャンスが多かったから、古い日本企業の体質も良く分かる。そうした雰囲気を共有していたに違いない森さんのお気持ちは、それなりによく理解できること前置きとして申し上げた。
以下は、私の説明したことの要旨である。
洗練された上場会社のトップは、もちろん森さんのような発言は決してしない。なぜなら、そうした発言をするはずがない心を持っていらっしゃるからだ。しかし、上場企業といっても、半数に近い数の会社のトップは、言わないが、考えは森さんに似たところがあるだろう。なぜならば、そうであればこそ、今のトップの地位にたどり着いたからである。心の中と外面が違う。
その方をトップに据えたのは、前のトップである。前のトップが、この「男」なら任せる事ができると確信すればこそ、「本人も思いもかけない急な」内定を告げたのである。よくある話ではないか。まさか自分が社長になるなどとは、と驚いた。そこでせめて一晩考えさせてくれるようにお願いした、とか、せめて妻に相談させてくださいと頼み込んだ、という、あれ、である。
その淵源が、敗戦後の日本で財閥解体をした米軍に発していること、具体的には三菱財閥の中心であった三菱合資会社の財閥解体後の会社の一つである陽和不動産の株式が、藤綱久二郎という投機家によって買い占められ、三菱グループが引き取ったという事件に発していること。それが、戦後日本の株の持ち合いの濫觴で、以来、持ち合いは日本企業の安定した経営基盤となり、高度成長を経てバブルにいたるまでの日本の株式会社制度を支えて来たこと。
そのバブルが崩壊して、銀行が持ち合いから外れざるを得ず、米国の非難も重なって、持ち合いという「慣行」は壊れたこと。
だが、バブル崩壊後の30年が「失われた30年」になってしまっているのは、実のところ、日本企業が安定した経営基盤を失ってしまったままであることに根本の原因があること。
これからはその基盤を独立した社外取締役に求めなければならない。それが、求められている社会の支配層、少なくともその一部には、森さんに共感する方々が強固に存在していること。それなりの理由あってのことである。
等々。(東洋経済オンライン3月3日)
その話を終え、ネットに記事化される前に、別の経済紙の方からの取材依頼をいただいた。
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