仏教師斬首、発端は生徒の嘘
Japan In-depth / 2021年3月11日 11時15分
:『独占調査。今の高校生は「パティ」なのか?』
この結果からは、現在のフランスの若者は、昔に比べてライシテによって宗教と生活を分離することに興味がないという傾向が強くなっており、すでに社会に出ている世代とは見解の違いが確認できる。
まず、学校であからさまな宗教に関連する物を身に着けることに賛成なのは、一般市民では25%しかいないのに対し、高校生はなんと52%存在している。過半数を占めているのだ。
また、公務員が宗教的信念を示していることに対して気にしない人は、一般市民では25%に対し、高校生は50%とこれまた過半数を占めている。
現在の若者は、どちらかと言えば、全ての宗教に対して寛容にとした1905年に作られたライシテの定義に忠実だと言える。若者の多くは、スカーフを学校で着用することを禁止した2004年のような法律や、公共の場でブルカを禁止した2010年のような法律は、イスラム教徒に対して差別的だと考えている。
▲写真 ブルカ着用の自由を訴える女性 出典:Christopher Furlong/Getty Images
昔は低所得住宅がある地域とは住む地域も分けられており学校も違った移民出身の子供たちも、今は同じ学校に通い、昔は学校にも入れなかった障がい者も、今は同じクラス内で学び、男女も平等に教育される。
そんな多様で平等を目指した環境の中で育ったフランスの現在の若者は、差別することはよくないことであり、人種、宗教、男女関係なく仲良くしなくてはいけないと学んできているのだ。また、世界でどちらかというと共通概念として認識されているアングロサクソン的な考え方も、現在はインターネットの普及により一般化している。
そのような教育を受け、そのような環境の中で育ってきたフランスの若者たちの多くは、どうして自由に好きなものを身に着けてはいけないのかがわからないのだ。どうして自分が大切だと思うことをやってはいけないのかがわからないのだ。どうして一定の宗教にそんな差別的な行為をするのかがわからないのだ。そして宗教を差別することは悪いことだと思っているからこそ、サミュエル・パティ事件の時のような生徒たちが現れてくるのかもしれない。
現在フランスの中には、明らかにライシテに対する世代による考え方の違いもでてきている。これほど世代でライシテに対する考えが違う中、果たして分断をつなげる「接着剤」として効果的に機能するであろうか?
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