米インド太平洋外交、多難な船出
Japan In-depth / 2021年3月24日 7時0分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2021#12」
2021年3月22-28日
【まとめ】
・先週、米韓・米中の「2+2会合」が行われた。
・米中会合では冒頭から米が中を非難、激しい応酬が繰り広げられた。
・今後外交における政治家レベルでの判断ミスの連続が懸念される。
先週は米国務長官が国防長官と共に日韓との2+2会合にそれぞれ参加した後、アラスカで中国の外交担当トップと意見交換した。先週お約束した通り、今週はこの一連の動きを総括したい。日本にとっては想定通り、またはそれ以上の成果だろうが、正直なところ、バイデン新政権のインド太平洋外交にとっては多難な船出である。
日米2+2、米韓2+2会合ではそれぞれ共同文書が発表され、共同記者会見も行われた。同盟国同士の会合でもあり、これは想定内だ。一方、米中の意見交換では滅多に文書作成や共同記者会見は行われない。ところが今回は、本来非公開のはずの激しい非難の応酬が内外メディア用冒頭発言の際に繰り広げられた。
案の定、内外メディアの注目はアラスカの米中「意見交換」に集まった。だが、日米、米韓の2+2会合にも論点は少なくない。詳細については先週のJapanTimesと今週の毎日新聞政治プレミアに書いたので、お時間があればご一読願いたいが、簡単に言えば、ほぼ全てが「起こるべくして起きた」ということではないだろうか。
■ 日韓との2+2
日米2+2と米韓2+2の相違点は予想以上に大きかった。米韓関係はやはり微妙である。少なくとも、過去数年来の米韓の溝がようやく埋まり始めたようには到底思えなかった。例えば、
●東京とソウルでの2+2共同文書は米韓同盟を「朝鮮半島とインド太平洋地域の平和、安全及び繁栄の基軸(linchpin)」とする一方、日米同盟は「インド太平洋地域の平和、安全及び繁栄の礎(cornerstone)」とされた。だが、より重要なことは、条件付きながら、今回韓国側が「インド太平洋地域」を同盟との関連で公式に言及したことだ。
●その条件とは、米韓が「韓国の新南方政策との協力を通じて」自由で開かれたインド太平洋地域創造のため協力するとした部分。クアッド(日米豪印)対話への参加も同様だ。韓国外相は「米側から参加の議論はなかったが、韓国の新南方政策を米国のインド太平洋戦略と如何に調整(harmonize and coordinate)するかにつき議論した」と述べていた。韓国の対中配慮は相変わらずのようである。
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