1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

菅首相「46%」目標とバイデン気候サミット(上)

Japan In-depth / 2021年4月24日 19時0分

第2の失敗は2009年の2020年中期目標設定時である。麻生政権の下では京都議定書の苦い経験を踏まえ、中期目標検討委員会を設け、日本の削減コストが欧米に比して衡平なものであることを確保すべく、限界削減費用、削減コストのGDP比等、様々な指標を用いて削減目標のオプションを評価し、最終的に2005年比▲15%(90年比▲8%)を2020年目標とした。





しかし2009年夏の総選挙によって民主党政権が誕生すると鳩山内閣はこうした検討を全く行うことなく、90年比▲25%目標を対外表明した。90年比▲8%を一気に三倍以上深掘りするものであった。





「全ての主要国が参加する公平で実効ある枠組みと野心的な目標の合意」を前提条件としたものの、他国は日本の大幅目標引きあげに拍手喝さいはしても、日本に追随して目標を引き上げる国は一か国もなかった。









写真:鳩山内閣(2009年9月16日 首相官邸) 出典:Junko Kimura/Getty Images





鳩山目標と辻褄を合わせるため、第3次エネルギー基本計画では原子力の総発電電力量に占めるシェアを5割まで引き上げるエネルギーミックスを策定した。





福島第一原発事故以後、「原発に過度に依存したエネルギーミックス」として批判の的になったが、もとはといえばフィージビリティを一切検討せずに公表された鳩山目標が原因であった。





■ コスト感覚を伴わない横並び志向





今回の目標は2050年ネットゼロエミッション目標を直線的にバックキャストして設定したものである。菅首相は温暖化対策本部後の記者会見において「経産省、環境省、政府を挙げて積み重ねてきた結果」としているが、新聞報道によればエネルギーミックスの検討を行っている経産省は「再エネを最大限積み上げても13年比40%減に届かない。魔法のような解決策はない」[2]とする一方、環境省は45%、小泉環境大臣は50%を主張していたという[3]。





とてもきちんとした積み上げの結果の数字とは思えない。しかも日本経済が被るコスト負担についての考慮された形跡がない。





▲26%目標設定の際はエネルギー自給率を震災前の水準まで戻す、電力コストを今よりも引き下げる、諸外国に遜色のない目標を出すという3つの要請を満たすエネルギーミックスに裏打ちされたものであった。





日本の産業用電力料金は主要国中最も高い。日本経済のことを考えるのであればコストへの配慮が当然あってしかるべきである。しかし、今回の目標引き上げは第6次エネルギー基本計画の見直しに先行して行われるものであり、その根拠は「米国主催の気候サミットまでに数字を出さねばならない。米国は2005年比▲50%を出す構えである。EUは既に90年比▲55%を出している。だから日本もそれに近い数字を出さねばならない」という数字の横並びに専ら引きずられたものである。これから▲46%の内訳を作らねばならない経産省当局は大変な苦労をすることになるだろう。





この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください