バイデン氏、演説で国境危機触れず
Japan In-depth / 2021年5月2日 19時0分
だがこの取り上げ方はまちがいである。演説全体では中国への言及はきわめて短く、少なかったからだ。演説全体としてはコロナ対策、経済対策、共和党批判、人種問題など国内の諸課題が圧倒的な重みと分量を占めていたのである。
さてこの長い演説のなかでバイデン大統領があえて触れなかった重大課題があった。それはメキシコ国境から怒涛のように侵入してきた大量の違法入国者によるアメリカの社会や国家の危機だった。国境沿いの各州はもちろんアメリカ全体にとっても国家の危機と呼べる状態にまでなっているのだ。
この違法入国者の激増についてはこの連載コラムの今年4月3日の記事でも報告した。だが事態はその後、さらに悪化したのだ。
バイデン大統領はしかし、この切迫した危機に対して単にその不法入国者の発生源となっている中米諸国の問題を提起しただけで終わったのだ。国境沿いのカリフォルニア、ニューメキシコ、アリゾナ、テキサス各州ではすでに緊急事態となり、バイデン政権にも国家非常事態の宣言を求めているのだ。しかし大統領はこの危機を長い演説のなかではほとんど無視したのだった。
ではこのアメリカにとってのメキシコ国境での危機とはなんなのかを説明しよう。
バイデン政権の誕生以来、アメリカのメキシコ国境に中米からの入国の希望者が巨大な流れとなって押し寄せてきた。大多数が違法の入国希望者、つまりアメリカ側の入国の規則を無視する不法の移民、難民、亡命者とされる。そして、とくに幼い子供たちが単身で送りこまれる事例が多いことがこの危機の特徴なのである。
▲写真 保護された保護者のいない3歳から9歳までの不法移民の子供たち(2021年3月30日 メキシコとの国境に近いテキサス州南部ドナ) 出典:Dario Lopez-Mills - Pool/Getty Images
バイデン大統領の入国政策緩和の結果として起きたこの「違法入国者の殺到」は国境地帯での人道上の悲惨な状況を生み、バイデン政権の最大の悩みとなったといえる。
4月20日、メキシコ国境沿いのアリゾナ州、ダグラス・デューシー知事は同州の非常事態を宣言した。同時に同知事はバイデン大統領に国家非常事態の宣言を要請した。違法難民の殺到でアリゾナ州や国境地域全体への危機が生まれたという訴えだった。
その直後の4月22日にはテキサス州のグレゴリー・アボット知事が同様の危機を訴えた。しかもさらに深刻なことに、違法入国者には新型コロナウイルス感染者が多いことが判明したのだ。アボット知事はこのコロナ感染拡大というアメリカ社会への危機についてとくに強く警告したのだった。
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