バイデン氏、演説で国境危機触れず
Japan In-depth / 2021年5月2日 19時0分
アボット知事はテキサス州を代表してアメリカの連邦政府は違法入国者たちのコロナウイルス検査や防疫の対策をほとんどとっていないとして、バイデン政権の任務不履行への訴訟を起こすという異例の措置をとったのである。
テキサス州が連邦政府を訴えるというのは国家全体を揺るがすような重大な事態だといえよう。
しかしバイデン大統領は議会演説ではこんなことには一切、触れなかったのだ。
国境地帯にはバイデン政権の登場直前から違法入国を試みる男女がそれこそ奔流のように多数、押し寄せてきた。中米グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルなどからの多数の人間がメキシコを経由してアメリカ国境に集まってきたのだ。目的はただ一つ、違法合法にかかわらず、とにかくアメリカ合衆国の領土内に入ることである。その理由は簡単だった。バイデン大統領がトランプ前政権の国境の壁の建設を停止し、アメリカへの移民や難民の受け入れ制限を緩和する政策を打ち出したことだった。その中米の人たちは、その新政策に奨励され、われもわれも、アメリカへ、という動きをとり始めたのである。
その結果、アメリカ政府の国境警備隊はこの3月だけで合計約17万の違法入国者を逮捕した。昨年12月の7万人の2倍以上の増加だった。とくに18歳未満の未成年の違法入国者が同3月に合計1万8千人と前月から6割増となった。
顕著なのは子供たちが単独で密入国を図るケースが激増したことだった。その原因はバイデン政権がトランプ政権と異なり、違法入国を図って逮捕された子供たちはそのままアメリカ国内の施設に保ち、入国審査をするという寛容な措置だといえる。
▲写真 米国とメキシコの国境で舟でリオグランデ川を渡った後、子供を岸に運ぶ父親(テキサス州ローマ、2021年4月9日) 出典:John Moore/Getty Images
トランプ政権では未成年者だけの違法入国者はアメリカ側で身柄を拘束すれば、原則としてみなメキシコ領内に追い返し、その場で改めてアメリカへの入国手続きなどを審査するという措置をとっていた。だがバイデン政権では未成年者が成人の保護や同行なしに密入国してきても、そのままアメリカ領内への臨時の滞在を認めて、その後の審査をするという寛大な措置へと変えたのだ。
アメリカへの密入国の場合、未成年だけでもなんとかアメリカ滞在が認められると、後からその保護者たる家族がアメリカに入れるという場合が多い。だから入国を切望する側はとにかく子供たちだけでも入国させようと必死になるわけだ。その密入国の物理的な作業はプロの犯罪集団ともいえる密入国業者が暗躍している。
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