混迷極めるミャンマーの行方
Japan In-depth / 2021年5月4日 21時49分
植木安弘(上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授)
「植木安弘のグローバルイシュー考察」
【まとめ】
・国際社会は対話の努力や人道支援以上の具体的な行動を取れない状況。
・武力衝突激化、経済低迷、コロナ禍深まる中で、混迷が続くとの危惧。
・軍事政権がこの状況の中でどこまで権力を保持できるかが鍵を握る。
国連の安全保障理事会(安保理)は4月30日、4月の安保理議長国のベトナムがその任期最後の日にミャンマーに関する非公式協議を開催し、ASEANの即時暴力停止を含む5ポイント提案を支持するプレス声明を発出した。
この声明では、ASEANの特使派遣について「一刻も早く」行うよう促し、さらに、ブルゲナー国連事務長特使のミャンマー訪問についても「出来るだけ早く」実現するよう呼びかけている。
しかし、中国とロシアの合意を得るため、「平和的なデモ参加者に対する暴力を再度強く非難する」や「軍に対し最大限の自制を行う呼びかけを繰り返す」といった西側提案の表現は削除された。特に中国は、ミャンマーの軍事政権に対する国際的非難や要求を内政干渉と規定して国際社会のより強い関与を抑制している。
▲写真 ブルゲナー国連事務長特使:Christine Schraner Burgener, Special Envoy for Myanmar(2019年2月28日) 出典:UN Photo/Loey Felipe
▲写真 潘基文事務総長(左)と会談するミャンマー軍最高司令官であるミン・アウン・フライン上級将軍。 (2016年8月31日) 出典:UN Photo/Eskinder Debebe
ブルゲナー事務総長特使は、4月24日ジャカルタで開催されたASEAN首脳会議の傍らでASESAN各国首脳並びにミャンマーのミン・アウン・フライン軍事司令官とも会談したが、既にミャンマー側からは、特使のミャンマー訪問は許可しないとの返事は来ていた。ミャンマー軍政府は、国連を通じた国際社会の関与には否定的な姿勢が伺える。
また、ASEANの特使についても適当な時期として、具体的な時期は明言せず、また、特使が訪問しても、拘束されているアウン・サン・スー・チー国家顧問やウィン・ミン大統領など国民民主連盟(NLD)の指導者などとの会見を許可する保証はない。軍事政権は、あくまでも自らの権力掌握の正当性を認知させ、軍が憲法改正の権限を握る現憲法下で有利な選挙を行うことで政治の全権を掌握することを狙っている。
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