モンデール元副大統領と日本(上)激烈な日本批判
Japan In-depth / 2021年5月5日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・モンデール氏が死去。日米関係史の特異な断面を蘇らせる。
・「日本に強硬な圧力を」激烈な日本批判の一方、具体的政策も提起。
・「駐日大使」超える日本との独特の関わり。バイデン政権にも通じる。
アメリカの元副大統領のウォルター・モンデール氏が4月19日、亡くなった。モンデール氏は日本でも広く知られていた。1993年から3年余り、日本駐在の大使を務めたことが大きかった。
しかしモンデール氏は1977年1月からの民主党ジミー・カーター大統領の下では副大統領だった。その後、1984年の大統領選挙には民主党候補に選ばれた。共和党の現職ロナルド・レーガン大統領に正面から挑戦した。
モンデール氏は副大統領になる前は長年、上院議員だった。その政治歴は単に日本駐在の大使だったという次元をはるかに超えて、アメリカ国政の中枢、トップで長年、活動してきた著名な政治家だったのである。
モンデール氏はミネソタ州ミネアポリスの自宅で病死したという。93歳だった。彼の死を伝える記事は日本の主要メディアにはすべて掲載された。ひととおり目を通したが、そこに書かれた彼の政治歴は「クリントン政権の駐日大使として米軍基地縮小問題に取り組み、米軍普天間飛行場の日本への返還合意に尽力した」という程度だった。日本側のどのメディアでも同じだった。
しかしモンデール氏は実際にはもっとずっとスケールの大きい政治家だった。上院の有力議員として、さらに副大統領として、また民主党の大統領候補として、アメリカの政治の主舞台で国政を根幹から揺るがすような活躍をしてきたのだ。私はこの間のほとんどワシントン駐在の記者としてモンデール氏の動向を考察してきた。
私はしかもモンデール氏とは1対1で率直な会話を交わしたこともあった。彼は意外な形で単に日本駐在の大使という水準よりは高い次元で日本との独特のかかわりを持ってきたのだ。その事実はモンデール氏の逝去を伝える日本での報道ではまったく伝えられなかった。
だから私がいまここでモンデール氏への追悼をもこめて、その話を伝えたいと思う。大げさにいえば、数の少ない歴史の証人ということにもなろうか。日米関係の歴史の特異な断面をよみがえらせることともなるだろう。
私はモンデール氏の政治的言動のなかで、少なくとも2つ、日本にかかわる事例を決して忘れたことがない。しかもそうした事例について私はモンデール氏自身と直接に話しあう機会を得たのだった。
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