開催反対論に「乗る」気はないが(上)「コロナ敗戦」もはや不可避か その1
Japan In-depth / 2021年5月14日 11時0分
細かい数字については異論も出ているようだが、少なくとも中止によって「お金は浮かない」どころか、最終的には国民がツケを払わなければならないのだ。
その一方で、開催に反対する声を一蹴するような発言も聞かれる。
これについては次回もう少し詳しく見ることとするが、どうも今の日本が置かれている状況は、今をさかのぼること80年、1941(昭和16)年とよく似ているのではないか。戦史を少しは勉強してきた私には、そう思えて仕方がない。
所詮勝ち目のない米国との戦争を決意するに至ったのは、日中戦争が泥沼化する中、米国からの経済封鎖(石油の禁輸など)によって追い詰められた末のことであった。
米国が要求してきた中国大陸からの撤兵について、
「ここで撤兵などしたら、今までの犠牲はなんだったのか」
というのが陸軍参謀本部の言い分だったが、これのどこが愚かであったかについては、森喜朗氏の発言とまったく二重写しになっていることを指摘すれば充分ではあるまいか。
しかも、軍人にせよ当時のジャーナリストにせよ、本心では勝ち目がないことを(程度の差こそあれ)理解できていたのに、無敵皇軍=日本軍は世界一強いのだという思い込みだけに頼って、国民の戦意を煽った。
結果はご承知の通り、国土を焼け野原にされて無条件降伏に追い込まれたわけだが、ならばやめておけばよかったのに、で済まされるほど単純な話でもない。
ただ、こういうことは言える。
戦争を決断した結果、失われたのは戦死者だけで320万人に達する人的被害と、前述のように国土が焼け野原となるほどの経済的ダメージであった。
その点、東京五輪がたとえ中止になったとしても、国民が失うのは、期待された経済効果がなくなるといった程度の話なのである。
今月はこの視点にこだわって議論を進めたい。
(続く)
トップ写真:感染対策が徹底される中行われた聖火リレー出発式(2021年3月25日 福島県楢葉町Jビレッジ) 出典:Kim Kyung-Hoon - Pool/Getty Images
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