バイデン大統領、発言ミスの実例
Japan In-depth / 2021年5月18日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・鉄道を熱く語ったバイデン氏の発言に相次ぐ事実誤認発覚。
・認知症に近いまだらな記憶は統治能力にもかかわる深刻さ。
・側近は大統領の発言ミス恐れ、記者や市民との接触を厳重制限。
アメリカのジョセフ・バイデン大統領は鉄道が大好きである。首都ワシントンでの長年の政治活動中、160キロほど離れたデラウェア州の自宅から列車通勤をしていたことで広く知られる。
その鉄道「アムトラック」がこの5月に開通50周年を迎えた。その記念行事でバイデン大統領がその鉄道への思い出を自由に語った。ところがその発言は事実の大きなまちがいばかりだった。同大統領がふだんは国政について自由に語ることを側近から厳しく抑えられている理由が歴然とした「真実の大失言」に満ち満ちていたのだ。
首都のワシントンから北のニューヨークや南のバージニアの両州などへと延びる幹線鉄道のアムトラック――アメリカとトラック(軌道)という言葉を合成した名称――は5月1日に開設50周年を迎えた。
ワシントンとニューヨークの中間にある伝統ある都市のフィラデルフィアで開かれたその記念式典に出たバイデン大統領は自分自身のアムトラックへの思い出を報道陣や鉄道関係者を前に自由に語った。
ひとつにはバイデン氏は半世紀近くのワシントンでの政治家生活ではアムトラックを頻繁に利用することで知られていた。ワシントンから北へ約160キロ、列車で片道1時間20分ほどのデラウェア州ウィルミントン市の自宅との間を毎週、あるいは週に数回も通勤していたのだ。この列車利用は彼が上院議員だった時代だけでなく、オバマ政権の副大統領になってからも続いていた。だからバイデン氏にはアムトラックへの愛着もとくに強い、ということなのだ。
▲写真 自宅のあるデラウェア州ウィルミントン市の駅のプラットホームに立つバイデン氏(当時、上院議員/1988年9月) 出典:Joe McNally/Getty Images
さてこの開通50周年式典でバイデン大統領は次のような発言をした。アムトラックへの真の思いを熱くこめたような楽しそうな口調だった。
「私はとにかくアムトラックの愛用者だったから、周囲から『アムトラック・ジョー』とも呼ばれていた。私が副大統領になって4年か5年が過ぎたころも、高齢の母親が病気だったので、その見舞いのためにウィルミントン市の自宅には頻繁にアムトラックで戻っていた」
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