ミャンマー、実質的内戦状態へ
Japan In-depth / 2021年5月23日 19時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・ミャンマー、内戦の危機が現実問題として差し迫る状況。
・反軍政デモは主要都市から地方都市へ。小規模、ゲリラ的開催に。
・国境地帯は少数民族武装勢力・住民武装組織vs軍の実質的「内戦状態」。
2月1日に軍によるクーデターで民主政府から実権を奪取して以来、反軍政を掲げて抵抗運動を続ける市民への実弾発砲や重火器使用による非人道的弾圧を続けているミャンマーで、内戦の危機が現実問題として差し迫る状況となっている。
クーデター発生以降、2、3月と中心都市ヤンゴンや中部の第二の都市マンダレーなどでは学生や若者に多くの一般市民が合流して反軍政のデモや集会が行われた。しかし、2月に軍の発砲で最初の犠牲者が出て以降、軍は市民に銃を向け、躊躇なく実弾を発砲したり、無抵抗の市民を殴る蹴るの暴行を振るったりする様子がSNSなどで発信されるにつれ、事態は変化してきた。
4月から5月にかけては以前のような大規模デモや集会は「小規模、ゲリラ的開催、短時間で解散」「主要都市ではなく地方都市」で行われるように様変わりしてきた。
▲写真 アウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相が描かれたプライカードを掲げ、軍と相対峙する民衆(2021年2月8日ミャンマー・ヤンゴン) 出典: Stringer/Getty Images
それもデモの様子などを発信するSNSなどではデモ参加者の顔をモザイク処理したり、ぼかしを入れたりするなど当局によるデモ参加者の個人特定を難しくする配慮がほどこされるようになってきた。
こうした市民による反軍政の動きに呼応するかのように中国と国境を接する北部カチン州や東部シャン州、タイ国境のカイン州、インドやバングラデシュに隣接する西部チン州などで軍政と長年に渡って対立してきた少数民族武装勢力が反軍政を掲げて軍の拠点や車列に対する攻撃を開始する事態になっている。
こうした動きに軍は空爆や砲撃で対抗、多くの周辺住民がジャングルに避難するとともに隣国のタイやインドに越境して難民化する状況となっている。
■民主政府が独自の武装組織編制
クーデター直後に身柄を拘束されたアウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相やウィン・ミン大統領が率いていた民主政府の与党だった「国民民主連盟(NLD)」は実権を掌握した軍政の最高意思決定機関「国家統治評議会(SAC)」に対抗して「国家統一政府(NUG)」を独自に樹立。スー・チーさんやウィン・ミン大統領に加えて少数民族代表も閣僚に示して対抗している。
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