コーツ発言は「令和のハルノート」「コロナ敗戦」もはや不可避か その4
Japan In-depth / 2021年5月26日 7時15分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・IOCコーツ氏「緊急宣言下でも五輪開催」は「令和のハルノート」。
・五輪開催の結論ありきで、日本国民の不安を無視したことに等しい。
・犬猿の「丸川vs.小池」を見ても、安全・安心な五輪など期待できず。
5月21日、IOCのジョン・コーツ調整委員長は、委員会後の記者会見で、
「たとえ大会期間中に東京で非常事態宣言が発令される事態が起きたとしても、予定通り開催するのか」
との質問に対して、
「その質問への答えは、もちろんイエスだ」
と明言した。同委員長によれば、
「緊急事態宣言下で、複数の競技のテスト大会が成功した。アスリートや日本の人々の安全や安心を守るための全ての計画は、最悪の事態を想定したもの」
なので、問題なく開催できるはず、ということのようだ。
▲写真 IOC ジョン・コーツ副会長 出典:Rodrigo Reyes Marin-Pool/Getty Images
報道に接した私が、まず直感的に思ったのは、
(まるで令和のハルノートだな)
ということであった。
日米開戦を目前に控えた1941(昭和16)年11月27日、これは米国東部時間であるが、首都ワシントンDCにおいて、米国国務長官コーデル・ハルから駐米日本大使に対して、一通の覚書が手渡された。
よく、昭和初期の日本人、とりわけ明治の建軍より敗戦の経験がなかった軍上層部は怖いもの知らずで、ぜいたくな生活に慣れた米国人などに負けるはずがない、などと単純に信じ込んでいたと考える人がいる。国民はそんな軍部に騙されて戦争に巻き込まれてしまったのだ、と。
▲写真 コーデル・ハル米元国務長官(1945年11月12日) 出典:Bettmann /Getty Images
事実は、いささか異なる。今さら旧日本軍を擁護する気はないが、控えめに言っても米国側は外交交渉で事態を打開できるとは考えていなかったのだろう、と思わざるを得ない。その象徴がハルノートなのである。
これより前、日本は中国大陸で侵略的な戦争を続けているとして、米国から経済制裁(石油などの禁輸)を受けていた。
そこで外交交渉が始められたわけだが、米国が強硬に求めてきた「中国大陸からの撤兵」は、当時の陸軍にとっては出来ない相談であった。戦わずして米国の圧力に屈したのでは、今までの(日中戦争における)犠牲は一体なんだったのか、ということになる。
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