コーツ発言は「令和のハルノート」「コロナ敗戦」もはや不可避か その4
Japan In-depth / 2021年5月26日 7時15分
ここで念のため述べておくと、私は「日米開戦の原因はハルノートだ」などという歴史観を奉じるものではない。多少は戦史を勉強しているので、この覚書が日本に手渡された時点で、日本海軍の空母機動部隊は、すでにハワイの真珠湾を目指して出撃していたことを知っているからだ。
国内的にも「11月末までに対米外交交渉が妥結に至らない場合は開戦」との意志一致がなされており、実際に交渉がまとまらなかったことから、
「ニイタカヤマノボレ ヒトフタマルハチ(1208)」
という暗号電文にて、日本時間の8日に真珠湾軍港を攻撃せよ、との指令が伝達されたのである。
つまり、ハルノートの内容がどうであったかということと、日本の戦争意志との間に、明確な因果関係を見出すのは難しい。さらに言えば、
「昔の日本人は、お国のために一致団結して戦った。それに引き換え今は……」
という表現も、私は聞くたびに鼻で笑ってしまう。戦時中、いかに戦局が不利になろうとも、陸海軍はメンツを張り合って戦争終結を言い出すことはできず、それどころか、戦争資材の分配をめぐって醜悪な抗争を続けていた。もちろんこの当時、内情を知る人の数など知れたものであったが、陰では「日日戦争」「二本軍」などと言われていたようだ。
▲写真 丸川珠代・五輪担当相(右端)と小池百合子・都知事(左端)(2021年3月3日) 出典:Du Xiaoyi - Pool/Getty Images
これまた今次の五輪を巡って、大会組織委員会の収支がもしも赤字になった場合の対応について問われた丸川珠代・担当大臣は、
「東京都の財政規模を考えれば、補填できないことはないはず」
と述べた。もともと「東京都が補填できない場合は国が……」という規定になっていることを念頭に置いたもののようだが、小池百合子・ 東京都知事は、
「国と協議すべき事柄」
と答えたにとどまった。丸川大臣の発言に直接言及こそしなかったものの、誰が見ても「当てこすり」であろう。マスメディアはこれをとらえて「犬猿の仲の二人がまたもや……」というように、面白おかしく書き立てていたが、事は税金の使われようの問題でもあり、また、こうした問題ひとつとっても、安全・安心な五輪開催など期待できない、という問題だ。まったくもって笑いごとではないのである。
(その1,その2,その3)
トップ写真:コロナ禍の中、マスクをする人と五輪のロゴ(2020年03月05日 東京・台場) 出典:Carl Court/Getty Images
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