比、南シナ海で対中監視強化も効果限定的
Japan In-depth / 2021年5月29日 12時49分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・南シナ海南沙諸島海域で中国が高圧的姿勢。比側も監視態勢強化方針。
・ドゥテルテ大統領、政治的配慮で中国に対し強固な姿勢見せられず。国内より批判。
・ドゥテルテ大統領の対応、南シナ海における中国の一方的な権益確保邁進させる一因。
中国が一方的に自国の海洋権益が及ぶとしている南シナ海南沙諸島周辺海域に多数の漁船を繰り出して領有権争いをしているフィリピンなどに高圧的姿勢を示していることに対してフィリピン政府は、同海域での中国の動きへの監視態勢を強化する方針を明らかにした。ただ、ドゥテルテ大統領は中国から提供されている多数のコロナウイルス対策のワクチンなど巨額の経済支援への思惑もあり、あくまで「監視態勢」の強化であるとし、どこまで「やりたい放題」の中国に実効性のある対応となるかについては疑問視する見方が支配的だ。
フィリピンのシリリト・ソベハナ国軍参謀長は地元ラジオ局の番組で5月4日にフィリピンが実効支配する南沙諸島の「パグアサ島(英名ティトゥ島)」に新たに補給基地を建設する計画があることを明らかにした。
さらにフィリピン沿岸警備隊のアルマンド・バリロ報道官は5月25日、パグアサ島に軍が設置する補給基地に加えて、周辺海域への警戒監視能力を一段とグレードアップした監視態勢を構築するとともに南沙諸島に近い南部パラワン島のエルニドに地域の「作戦用の運用司令部」を新たに設置する構想を明らかにし、必要となる予算をドゥテルテ大統領に求めるとした。
パグアサ島に構築予定の監視機能に関しては高性能の監視カメラや夜間監視カメラなどを装備して「周辺海域での海難事故などの救難捜索機能」に加えて「操業するフィリピン漁民の保護」、そしてなにより最近活動を活発化している中国の動きに対する警戒監視強化が念頭にあることを示している。
▲写真 南沙諸島の島々における中国の領土主張に対する抗議集会 2016年7月12日にフィリピンのマカティの中国領事館前にて 出典:Dondi Tawatao/Getty Images
■中国の漁船展開、海上民兵が乗り組みか
南沙諸島周辺海域では3月以降、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内のウィトサン礁や周辺のティザード礁周辺に多数の中国漁船が集結する事態となっていた。一時その中国漁船の数は多い時で240隻となったためフィリピン政府は抗議した。
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