比、南シナ海で対中監視強化も効果限定的
Japan In-depth / 2021年5月29日 12時49分
しかし、中国側は「天候悪化で避難している漁船に過ぎない」と弁明したが、天候が回復した後も現在まで停泊し続けている。5月18日現在でも約120隻が残っているとの情報がある。
特にティザード礁は中国以外に台湾、フィリピン、ベトナムも領有権を主張しており、中国の一方的な行動に各国から批判の声が上がっている。
沿岸警備隊は今後も海軍、海洋漁業省などの関係機関と協力して「必要な処置を講じる」との姿勢を示している。
■ドゥテルテ大統領の優柔な対応
こうした中国の一方的に「既成事実」を作ろうとするかのような強気の行動に対してドゥテルテ大統領は外交ルートを通じて再三抗議はしているものの、国内では「あくまでポーズに過ぎない」との批判が出ている。
というのも南シナ海での中国の行動に対してあらゆる発言、主に中国批判の発言が各方面からでることにドゥテルテ大統領は業を煮やし、5月18日には「外相と報道官以外はフィリピンと中国の間の南シナ海問題に関する公の発言を控えるようにせよ」との指示まで出す事態となっている。
▲写真 人民大会堂で開かれる会議の前に、中国・習近平国家主席と握手を交わすドゥテルテ大統領(2019年4月25日) 出典:Kenzaburo Fukuhara/Kyodo News - Pool/Getty Images
こうしたドゥテルテ大統領の姿勢に対してフィリピンのメディアなどからは「収束が見えないコロナ禍で中国から大量のワクチン提供を受けていることが背景にあるのは間違いない」と指摘している。
ドゥテルテ大統領は2016年の大統領就任以来、対中国では「是々非々」を唱えながらも中国による経済支援やインフラ整備協力、投資などへの「政治的配慮」から南シナ海問題でも断固として強い姿勢を打ち出せないでいる。
こうしたフィリピン側の「優柔」な対応に付けこむかのように中国は5月1日から8月16日まで「南シナ海の北緯12度以北での全ての船舶による漁業活動の一時停止(漁業モラトリアム)」を一方的に宣言した。
北緯12度以北には南沙諸島は対象外だが、中国とベトナムが領有権を主張している西沙諸島や中国とフィリピンが領有権を争っているスカボロ礁が含まれていることからフィリピン外務省は中国に対して強く抗議している。
抗議は「中国の措置は国連海洋法条約にある周辺国の海洋権益を脅かすものであり、国際法上の根拠がない」というもので、フィリピンとしての立場を主張した。
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