先人たちの夢が今日の日米関係に ニューヨーク日本人墓地墓参会110年
Japan In-depth / 2021年6月5日 10時37分
津山恵子(ジャーナリスト)
「津山恵子のニューヨーク裏窓日記」
【まとめ】
・ニューヨークには1912年に購入された日本人墓地があり、以来110年間、日本人・日系人による墓参会が続いている。
・ニューヨークに最初に訪れた日本人は、1860年6月まで遡る「遣米使節団」の侍たちだった。
・現在、在ニューヨーク日本国総領事館に登録しているニューヨーク州在住日本人は、45,633人。日本人墓地に眠る先人たちの努力がなければ、これほど多くの日本人が今日、快適に暮らしてはいないだろう。
米国の祝日であるメモリアルデー(戦没者追悼記念日)の2021年5月31日、ニューヨーク市クィーンズ区からマンハッタンを見渡す小高い丘にあるマウント・オリベット墓地に、約50人の日本人や日系人が集まった。その一角にある日本人墓地の清掃と墓参会を行い、19世紀末から渡米し活躍した先人を偲ぶためだ。
英語での会話が多い子供達から、ニューヨーク日系人会、ニューヨーク日系ライオンズクラブなどのメンバーが、肌寒い曇り空のもとに集まった。ワイワイとせわしなく草むしりや草刈りに精を出し、子供達が中心となって墓石一つ一つに水を注ぎ、雑巾やたわしで丁寧に磨いた。
▲写真 お墓の前に花を植える子供達 Ⓒ津山恵子
最後に、ニューヨーク育英学園の児童が描いた日米国旗が、数十ある墓石前に飾られた。花輪も届き、清掃を始めた時に比べ、かなり彩り豊かになった。
▲写真 日米の国旗と花輪がたむけられた日本人墓地の碑 Ⓒ津山恵子
長年ニューヨークに住む日本人・日系人でさえ知らない日本人墓地の建立に尽力したのは、高見豊彦医師(1875~1945)。熊本県出身で、宣教師が開いていた英語塾に通ううちに、キリスト教教育者で同志社大学の前身、同志社英学校の創立者である新島襄氏(1843~1890)のことを聞く。新島氏は、米国に憧れ、国禁を犯して米国に密航し、留学生として頭角を表したのち、宣教師となった。新島氏の情熱に感動した高見氏は、英国船の船員となってニューヨークに渡った(ニューヨーク日系人会=JAA、本部ニューヨーク市、1914年設立、会員1000人=による)。
▲写真 高見豊彦医師 出典:ニューヨーク日系人会
高見氏は、学資を稼ぎながら英語を勉強し、その後、米東部のアイビーリーグ名門校、コーネル大学医学部を2番の成績で卒業した。在学中、日本人男子らしき遺体の解剖に立ち会ったが、名前がなく番号で処理されていた。これをきっかけに、日本人墓地購入の必要性を痛感し、「紐育日本人共済会」を設立。当時のお金で2500ドルの募金を集め、1912年、マウント・オリベット墓地内に念願の土地を購入した。
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