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「コロナ・オリパラ・菅政権-人生は能力?ギャンブル?」続:身捨つるほどの祖国やありや 6

Japan In-depth / 2021年6月10日 23時0分

私は、若いころから陸上でも海上でもおよそ競技なるものの才能なく、別のことをして生きてきた。しかし、その私も、なにかの理由で五体満足でなければ、それなりのスポーツに挑んだかもしれない。いや、ひょっとしたら今でも、年齢別の競技なら目指すということがありえなくはないかもしれない。そういえば、ゴルフの好きだった父は、その終わりが近づくとシニアの大会によく出場していたものだった。





オリンピック・パラリンピックは、文明とそこに到達した人類の時代を目に見える形で、生きている人間が演じるものとして示すのである。その、自分の置かれた時代の実感が目の前でブレードのような義足を身につけて走る選手のおかげで、人々の一つ一つの心に感激として湧きあがる。私の心が例外であろうはずがない。





その人々の心に灯った熱い波は、菅さんを押し上げる。大多数の人々が、殊にメディアの多くが、コロナ禍でオリンピックもパラリンピックも止めようと声をそろえたときに、開催へ引っ張っていったのは菅さんだった、という思いが、9月の日本の心になる。





したがって、菅さんは、自民党総裁選も総選挙も楽々と勝つ。続投である。長期政権になるかもしれない。









▲写真 菅義偉首相 出典:Nicolas Datiche - Pool/Getty Images





それが政治ということなのだろう。政治では、勝てば官軍なのである。





そうはならない、という向きもあるだろう。そちらが正論かもしれない。わかる。しかし、ワクチンの接種は怒涛の勢いで進んでいる。誰あろう、それこそが菅さんの功績として、9月には称えられることになるのだ。





「究極の幸福に達する道はただ一つ、金持ちになることで、そのためには一流大学に進学せよ」というメッセージがあるという。皆さんはどう思われるだろうか?





マイケル・サンデルの『実力も運のうち』(早川書房 2021年刊)という本に出てくる話だ(260頁)。ちなみに、原題は“Tyranny of Merit”という。そちらの方がわかりやすい。能力主義の専制といったところだろうか。訳者の苦労も素晴らしい。一流の大学に行くのも実は運次第という事実、本人の努力で大学に合格するわけではないという真実、サンデル氏が本のなかで言おうとした肝心かなめのことを簡潔に説明しているからだ。





問題は、能力主義のもとでは、成功した人は、おごり、失敗した人は我が身を責めるしかないことだ。しかも成功は、金の多寡に集約されてしまう。









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