米軍空母、日本周辺にいなくなる
Japan In-depth / 2021年6月12日 19時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米空母「ロナルド・レーガン」がアフガニスタンからの米軍撤退のため中東海域へ移動。
・中国への軍事抑止にあたる日本周辺の米空母が数ヶ月皆無となる状態は危険。
・バイデン政権の空母の移動で西太平洋に空白が生まれ、対中抑止態勢が弱まる懸念。
日本周辺の西太平洋海域に常駐するアメリカ海軍原子力航空母艦「ロナルド・レーガン」がアフガニスタンからの米軍撤退の安全保障のため中東海域へと移動することになった。このため日本周辺にはアメリカ海軍の空母が1隻もいないという異例の状態が数ヵ月、続くことになる。
バイデン大統領があわただしく発表したアフガニスタンの米軍全面撤退を期限までに安全に完了するための臨時の措置だとされるが、中国への軍事抑止にあたる日本周辺の米軍空母が皆無となる状態は危険だとする声は米軍内部からも起きている。
日本の横須賀基地を母港とし、日本周辺の西太平洋での活動を主要任務とする空母ロナルド・レーガンがこの6月からインド洋北部のアラビア海やペルシャ湾での警戒活動を開始するというバイデン政権の国防総省の方針はアメリカ海軍元准将のマーク・マクガマリー氏らが5月下旬に発表した論文などによって明らかにされた。
同論文はワシントンの安全保障研究の大手シンクタンク「民主主義防衛財団(FDD)」の機関誌に掲載された。その後すぐにCNNテレビも同様にアメリカ海軍が空母ロナルド・レーガンを西太平洋から中東海域へ移動させることを決めたと報道した。アメリカ海軍当局はこの報道を否定しなかった。
ロナルド・レーガンは第40代のアメリカ大統領の功績を記念して名づけられたアメリカ海軍の主力空母で、2003年に初就航した。排水量約10万トン、全長333メートル、乗組員約4500人、艦載航空機数十機という威力を保ち、ミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦などそれぞれ数隻とともに空母打撃群として機能する。
アメリカ海軍が保有する新旧計10隻ほどの航空母艦のなかでもロナルド・レーガンは唯一、アメリカ領土以外の日本の横須賀基地を母港とする空母であり、日本本土や日本周辺の防衛の柱とされてきた。
同空母は2011年3月の東日本大震災での日本の被害を救済するための米軍の「トモダチ作戦」では主力艦となって活動した。
ロナルド・レーガンは2015年10月に横須賀を正式に母港として、入港した。それ以来、中国の軍事膨張で緊迫の続く西太平洋の東シナ海、南シナ海、さらには日本海など日本周辺での防衛行動にあたってきた。
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