バイデン政権の北朝鮮政策が日本に投げる影
Japan In-depth / 2021年6月25日 23時30分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・バイデン政権新政策は、北に真に脅威感を与える軍事的要素は皆無。
・北の完全な非核化に熱意はなく、「段階的な非核化」にも同意か。
・新政策は日本の拉致事件解決の努力への阻害ともなりかねない。
アメリカと北朝鮮との交信が久しぶりで再開した。
バイデン政権が北朝鮮に対する非核化を中心とする新政策の立案を終えたと発表し、北朝鮮が曲がりなりにもそれに対して、拒否とも受諾とも不明ながら、一定のメッセージを発信したからである。
しかしバイデン政権は新たとする北朝鮮政策の内容は明らかにしていない。その輪郭を抽象的な言葉で表現するだけだ。
だが北朝鮮は金正恩労働党委員長が「バイデン政権との対話にも、対決にも応じる準備はできている」と、一応の対応をみせた。バイデン政権との話しあいに応じるとも応じないとも、受け取れる曖昧な反応だった。
▲写真 北朝鮮の金正恩労働党委員長(2019年4月25日) 出典:Mikhail Svetlov/Getty Images
バイデン政権側ではジェイク・サリバン国家安全保障担当の大統領補佐官が金委員長の言明を「興味あるシグナルだ」として協議再開への前向きの姿勢をみせた。ところがその直後、北朝鮮側では金委員長の妹の金与正労働党副部長が「間違った期待を抱いている」とする冷たい反応を示した。
要するにアメリカと北朝鮮の間ではまた北の非核化という年来の重大課題をめぐってのジャブのような、短い言葉のやりとりが始まったわけだ。
だが日本側としてここで真剣に考えねばならないのは、バイデン政権の北朝鮮政策とはなんなのか、そしてその政策は日本にどんな意味を持つのか、という点である。
結論を先に述べるならば、バイデン政権の北朝鮮政策のいまわかった部分だけでも、日本にとっての不安要因が目立つのである。そして不安要因は日本の悲願といえる北朝鮮の日本人拉致事件の解決にも暗い影を広げそうなのだ。
バイデン政権は5月はじめには北朝鮮政策を決めたと発表した。だがその内容については「測定できる実利的なアプローチ」というような表現で輪郭を伝えただけで具体的な部分は未開示のままである。
とはいえワシントンでの情報の流れからそのバイデン政権の新政策の特徴はいくつかがすでに浮かびあがってきた。その特徴を3点ほどあげてみよう。
第一にはバイデン政権が朝鮮半島問題では至上目標のはずの北朝鮮の完全な非核化に当面それほどの熱意や資産を注いでいないという印象である。
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