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日本改鋳3「日本の失われた30年と江副浩正氏」続:身捨つるほどの祖国はありや 7

Japan In-depth / 2021年7月7日 0時6分

この1985年、江副氏はリクルートの緊急マネージャー会議で「オール・ハンズ・オン 全員、甲板に出ろ」と言い放った。「『モノづくり王国』の日本で、『情報サービス』によって産業の頂点を極めようとする宣戦布告だった。」(269頁)





紙の情報誌で急上昇しつつあるリクルートで、江副氏は「放っておいても成長する『情報誌』のビジネスへの情熱を失いつつあった。」と著者はいう。(270頁)





なんということだろう、と私は思いながら、この部分に傍線を引いた。本の題名が『起業の天才!』であることを改めて思い出した。そうなのか、そういう風に世の中の先が見える人がいるのか、という感慨があった。





「信用できるのは大銀行や中央官庁で、起業家やベンチャーはいかがわしい。この価値観もまた、バブル崩壊から30年経っても日本経済が停滞から抜け出せない根本的な原因のひとつなのかもしれない。」442頁)





そう著者は総括する。





私は著者の大西さんがいかに敏腕の記者であったかを、取材の現場で存じ上げている。その大西さんの総括に私は改めて日本について考えた。





私は、『失われた30年 どうする日本』という特別プロジェクトを、私自身が理事長を務める日本コーポレート・ガバナンス・ネットワークで立ち上げている。田原総一朗さんと寺島実郎さんを始めとして、約1年をかけて、これはという方々にご講演をいただき、次の世代のための日本を多くの人々とともに考えるつもりである。リモートは有難い。会場なしに2000の人が集まることができる。





そこへ、東芝の社長が辞め、取締役会議長である社外取締役が再任を拒否される事件が起きた。すぐに後を追うように三菱電機の不祥事である。次々とメディアの取材を受けた私は、「信用できるのは大銀行や中央官庁で」はなくなってしまっている日本について話すしかなかった。





日本はどうするのか、どうなるのか。





「産業と経済は表裏一体である。市場と国家は、各々独立した論理で動く。ビジネスの世界だけが独立して存在していると考えるのは誤りである。」(兼原信克、産経新聞2021年6月30日)





兼原氏については、以前『歴史の教訓』(兼原信克、新潮社 2020年)を読んでいた。「国家安全保障局次長などをへて、政権中枢で日本外交の屋台骨を支えた著者」との篠田英朗氏の書評を読売新聞でよんで購入した本だった。





産経新聞の論考で、兼原氏は「問題は、日本の経済関係官庁に、長い経済と安保の遮断の結果、『町人国家』(天谷直弘・元通商産業省審議官)とも呼ぶべきマインドがしみついていることである。」と言い切る。





今回、江副氏について読むことで、情報産業が世の中を席捲する世界に取り残された観のある日本の、あり得たかもしれない可能性について知った。





しかし、江副氏はもういない。日本の未来は現在の先にしかない。





「令和の経済関係官庁には、市場経済至上主義を卒業して、自ら国家安全保障を担う主力官庁であるというアイデンティティを持ってほしいと願う」兼原氏の言(上記産経新聞)は、正に東芝事件の核心を射ている。





私は、いつも楽観的である。だから、私は、日本の次世代は世界をリードすると信じて生きている。





トップ写真:オフィス街を歩くサラリーマン(1985年8月1日) 出典:robert wallis/Corbis via Getty Images




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