サイバー戦、物理的攻撃の脅威
Japan In-depth / 2021年7月19日 19時0分
清谷信一(防衛ジャーナリスト)
「清谷信一の防衛問題の真相」
【まとめ】
・ネットインフラへの物理的な攻撃は日本経済に深刻な被害をもたらす。
・サイバー攻撃に対する日本の自衛隊の対策は改善する必要がある。
・サイバー戦に関わる憲法解釈や法整備の議論をすべき。
サイバー攻撃というと一般にサイバー空間内におけるハッキングや侵入、情報の破壊など電子の世界だけのことと思われがちだ。だが、もっと深刻なのはネットインフラへの物理的な攻撃だ。
特にIXP(Internet Exchange point:インターネット相互接続点)と海底ケーブル陸揚所への攻撃は深刻だ。これらが破壊されれば、国内でネットが使えず、日本は完全に海外から孤立する。
ネット空間状のハッキングなどと異なり問題なのは、インフラが物理的に破壊されてしまえば、容易にリカバリーや復旧ができないことだ。また、すべてのネットユーザーが影響を被る。その間ネットが使用できずに、インフラや株式、金融決済、交通や発電、商取引から通販まで止まってしまう。日本経済や国民生活は戦争に匹敵する多大な損害を受けることになる。無論個人の日常生活も深刻な打撃を受ける。
大規模なIXPは日本には10カ所ほど存在し、その多くが東京近郊に集中している。場所は一応秘匿されているが、専門家によると特定はさほど困難ではないそうだ。これらを特定してドローンや迫撃砲、あるいは弾道弾などで物理的に破壊すれば日本でネットはほぼ使えなくなる。また東京への過度の集中は自然災害などに対してもリスク分散されておらず、危機管理上問題なのは言うまでもない。
ネット空間といっても海外との通信は海底ケーブルを通じておこなっている。日本には海底ケーブル陸揚所も10カ所ほどあるが、千葉県と三重県の2カ所にあるものが突出して大きい。この2カ所の基幹施設が物理的に攻撃を受けて破壊されれば、その被害の復旧は極めて長い期間がかかる。
その間海外との通信は不可能となり、ネット空間は鎖国状態となる。なおこれら海底ケーブル陸揚所の所在地は公開されている。またご丁寧にケーブルの埋設地域には「この下には重要なケーブルが埋まっています」と看板まで立ててある。
繰り返すが、IXPと海底ケーブル陸揚所が物理的に破壊されれば、日本が受ける打撃は相当深刻であり、莫大な国富が一瞬にして吹き飛ぶ。
恐ろしいことにこれらの施設は警察や自衛隊が守っているわけではない。民間のガードマン程度では敵の特殊部隊や工作員の部隊が攻撃すればあっという間に制圧、破壊される。ドローンや迫撃砲による攻撃も同様だ。
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