サイバー戦、物理的攻撃の脅威
Japan In-depth / 2021年7月19日 19時0分
また、中国などとの戦時となった場合、確実に弾道弾の攻撃目標になっているだろう。通常弾頭の弾道弾によるこれらの施設の攻撃ならば、人的被害は極限されて、敵国は自衛隊や米軍基地を攻撃するよりも国際社会からの批判も抑えることができる。
防衛省は、来年度もサイバー関連の予算や人員を大幅に増やす予定だ。660人程度だった自衛隊全体のサイバー関連人員を23年度までに1000人を超す規模に拡大する。またNTTなど民間企業の人材も採用して、中国やロシアなどによる攻撃の技術向上に対抗する。
▲写真 高度化・巧妙化するサイバー攻撃に対応するサイバー防衛隊員(令和2年度防衛白書) 出典:防衛省
だが、自衛隊が守るのは自衛隊のシステムだけであり、民間や他の官庁含めて、公的なインフラを対象とはしていない。例えば、防衛関連企業や、金融機関、港湾や空港などのサイバーセキュリティに関与はしていない。当然ながら本稿で問題にしているネットインフラの物理的な防衛もやる気はない。しかもこれらのアセットが攻撃されても自衛隊は報復をしない。これは他国の軍隊のサイバー部隊とは大きな違いだ。
通常の自衛隊の戦力は、戦闘機部隊にしろ、戦車部隊にしろ、護衛艦隊にしろ、日本の領土・領空・領海、国民の命や財産を守るために存在する。サイバー戦に関しても、守るのは自衛隊だけだ。これは極めていびつである。
繰り返すが、自衛隊はIXPや海底ケーブル陸揚所、更には発電所や金融機関などのシステム、インフラをサイバー攻撃から守るつもりはない。これは仮想敵国に対して、民間インフラを攻撃してくださいといっているようなものだ。
実際に、北朝鮮や中国の軍関係のハッカーが日本の民間企業にも攻撃を加えている。そもそもサイバー戦において相手がアマチュアなのか、公的機関なのか、軍の部隊なのかの判別をつけるのは極めて難しい。そしてそれらの攻撃に対する報復手段はないので、抑止が効かずに、野放し状態だといってもいいだろう。
そもそも自衛隊のサイバー部隊には問題が多い。まず諸外国に⽐べ、圧倒的に数が少ない。能力も低い。そして実戦経験に乏しい。これは、基本的には攻撃が禁じられていることが大きい。このためサイバー戦で主導権を持てない。仮に有事には超法規措置でその縛りが解けるとしても、その段階になって情報収集していては間に合わない。現状では、自衛隊の野外通信システムなどの防護すら十分ではない。
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