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なぜ今ビートルズなのか 忘れ得ぬ一節、一場面 その3

Japan In-depth / 2021年7月23日 23時0分

これは以前にも述べたことがあると思うが、ビートルズの面々は、イングランド西部の港町リバプールの出身で、いずれも「居残りアイルランド人」の子孫だと言われる。





18世紀以降のアイルランドは、幾度も飢饉に見舞われた。主たる原因は、疫病によるジャガイモの不作で、1845年から49年にかけての世にいう「ジャガイモ飢饉」では、100万人以上が餓死したという。





そのようなアイルランドでの暮らしを見限り、新大陸アメリカへの移住を志す人が後を絶たなかったわけだが、彼らはまず、アイルランドから最も近い港町で工業都市でもあるリバプールに、続々と移住してきた。この港からは大西洋横断航路が開かれていて、あのタイタニック号の沈没事故(1912年4月14日)も、リバプールからニューヨークを目指しての処女航海中に起きたことである。





一方、工業都市として発展を続けていたリバプールで仕事を見つけ、そのまま生活基盤を築いた人も少なからずいた。彼らがすなわち「居残りアイルランド人」というわけだ。





もう少し厳密に言うと、ジョージ・ハリスンの父親はウェールズ出身だが、アイルランド系で敬虔なカトリックであった母親の薫陶で、三男ジョージも、自身のアイデンティティについて、アイルランド系だと考えるようになったものらしい。





また、リンゴ・スターだけは、





「僕のスターキーという姓(彼は本名リチャード・スターキー)は、スコットランド系だと聞いたことがあるけど、血筋とか家系とか、あまり興味がないんだよ」





などと、いかにも彼らしいコメントをしたことがある。このため、4人のうち3人までがアイルランド系、と記された資料も見受けられる。





リンゴとは対照的に、アイルランド系としてのアイデンティティに強いこだわりをもっていたのがジョン・レノンであった。





たとえば息子にショーンと名付けているが、これはジョンをアイルランド風に発音したもの。また、映画のタイトルになった「イエスタディ」はじめ「ミッシェル」など、初期の楽曲に短調の名曲が多いのは、アイルランドの伝統音楽の影響ではないか、と見る向きも多い。日本でもよく知られる「Let it be」の歌詞なども、アイリッシュ・カトリック特有の聖母マリア信仰(ありのままに生きなさい、という教え)に根差していると言われる。









▲写真 ビートルズ(1962年1月1日) 出典:Photo by Michael Ochs Archives/Getty Images





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