中国とはどんな国家なのか その3 人権弾圧と影響工作の秘密
Japan In-depth / 2021年7月27日 7時0分
影響工作のためには一連のソフト・パワーがまず使われる。いかにも無害な民間の交流、文化の交流などから軍事工作、心理作戦まで多様である。その当事者の政府がどんな性格によって、発信源が明確にされる「白プロパガンダ」から秘匿や偽装される「黒プロパガンダ」までが使われる。
影響工作は近代国家一般によって、もう何世紀も実行されてきた。外交政策の道具であり、軍事戦略の一部でもあった。場合によっては将来の危機への対処、さらには当事国のグローバルな地位の強化が目的にもされた。
中国にとってはグロ-バルな規模での自国のイメージや力の拡大のためにこの影響工作はとくに重要となってきた。その目的はアジア地域でのパワーの拡大、香港の民主主義弾圧、新疆でのウイグル人迫害、台湾の事実上の独立の阻止、そしてさらにはアメリカとの間でグローバルな主導権を争うこと、などだといえる。
中国政府も中国共産党もその影響工作に関してはきわめて秘密を守ろうとする。
だから中国の公式データによって影響工作の規模などを測定することは難しい。影響工作の評価となると、もっと難しくなる。中国の政府や共産党の内部で資金の豊富な大規模のプロパガンダ作業を実行する多数の部局の複雑で広範な構造のためである。
オーストラリアの主要国際問題研究所「ローウィー研究所」のリチャード・マクレガー上級研究員がその著書『党』で指摘したように、中国共産党内で人事やメディアを管理する主要部門は対外的にはいつも低姿勢をあえて保っている。
だからその活動の実態を知ることはなおさら難しくなるのだが、それでもなお公開に近いデータのなかに有益な情報もときには含まれている。ただしその種のデータは中国語だけである。
ではどんなデータかというと、政府や党の内部での各組織の区分などである。たとえば中国の国務院下の民政部(省)は統一戦線工作部の下に登録された社会組織の公式データベースを保持している。自分たちの工作に必要な情報を得て、関連部局を効率よく動員する際に有益となるデータベースなのだろう。
だがそれでも中国側の公式データは影響工作の規模や範囲についてきわめて限られ、不完全な構図しか明らかにしない。そこで諸外国の民間の組織が中国の公式の多様な情報源を利用し、多様な技術手段を使って分析して、中国の影響工作の実態をかなり明らかにしてきた。
その種の分析では自動翻訳やその他の多様な解析手法が役に立った。中国の影響工作のこのような手法での分析で成果をあげた研究、調査機関としては、「民主主義安全保護同盟」、「データ・エイド中国公式外交」、「マップ・インフルエンCE」などがあげられる。
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